“選球眼”でヒット率向上、“全員野球”で2割成長を持続するOKI電源工場:メイドインジャパンの現場力(20)(3/3 ページ)
製造部門の非付加価値時間削減の取り組みもきめ細かく行われている。電源部品は技術的には成熟した面がある市場でもあるので、製造装置などは非常に古いものなども多い。
さらに「ストライクゾーン」で絞った製品レイヤーでは、大型の実装部品などがどうしても多くなるために、ロボットを含む機械による自動化が行いにくいという状況がある。さらに少量多品種生産が要求されるため、これも自動化が行えない要因となっている。つまり、生産性の改善には人の工夫が大きな力を発揮するということになる。
30年選手なども使用されている実装ライン。電源部品はある意味で成熟が進んでいるので古い機械などを採用するケースも多い(クリックで拡大)
例えば、1つには組み立て生産ラインにおける部品の適宜補充の手間を低減するために、部品を補充した棚そのものに車輪を付け、組み立てライン外のサブアセンブリーゾーンで部品補充を行い、棚ごと入れ替えるような手法を開発した。
車輪付きの部品棚。組み立てラインで部品の適宜補充の手間を削減した(クリックで拡大)
また、はんだ付けにおけるリフロー炉の前後で基板を乗せるラックをいちいち回収して前工程に運ぶ工程が発生していたが、これをからくりにより自動で回収できるようにした工夫などもある。
リフロー炉のラックを自動で戻すからくりによる仕組み(クリックで拡大)
これらの数多くの工夫が日々行われているという。佐藤氏は「移動やラック積み、人探し、モノ探しなど付加価値のない作業を洗い出して削減することは日々行われている。流れ全体をよくすることが全体的な効率に貢献する。これを社員全員で行えていることが当社の強みだ」と述べている。
今後については「OKIグループ外の売上高についてはここまで20%成長を続けてきたが、これを維持できるようにする。さらに、2018年度からはOKIのEMSグループに入ったので、このシナジー効果を発揮していく」と述べている。
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