ムロジク氏はデジタルツインを実現する上でのシーメンスが唯一である点を「包括的(Holistic)」という言葉で説明する。それは「バーチャルプロダクト」「バーチャルプロダクション」「リアルプロダクション」「リアルプロダクト」の4段階に分けられ、MindSphereによるデータ分析などによって常にパフォーマンスの向上を継続できるようになっている。「メカ、エレクトロニクス、ソフトウェアの設計と解析のためのツール、PLM、生産ラインの自動化ソリューション、MindSphereといったパワフルなツールがそろうシーメンスだけが、デジタルツインを最適化ループで向上していける」(同氏)という。
この包括的手法を取り入れた事例として挙げたのがドイツの中小製薬企業であるバウシュ・ウント・ストローベル(Bausch+Stroebel)だ。エンジニアリング効率を30%以上向上する成果を得た。ムロジク氏は「大企業でない、中小規模の企業でもデジタルツインの導入は可能だ」と訴えた。
他にも、オーストラリアの塗料メーカーのダラックス(Dulux)による生産のスモールバッチ化や、航空機部品サプライヤーのFACCによる製品開発スピードの15%向上、マセラティ(Maserati)による市場への製品投入期間半減などの事例を紹介した。
2016年の発表から機能向上を重ねているMindSphereについては、オープンなPaaSであることを強調した。ムロジク氏は「シーメンスだけでなく、シーメンス以外のシステムとデバイスをつなげるものだ。エッジとクラウドの間でデータをつなげることで重要な価値を生み出せる」と説明する。
既に100万以上のデバイスやシステムとつながっているMindSphereは、パートナーも160社以上に拡大している。そしてMindSphereの活用で重要な役割を果たすアプリケーションの開発では、世界20カ所のアプリケーションセンターを中心に、17カ国57カ所、940人以上のソフトウェア開発者が従事しているという。メンディクスの買収は、これらの取り組みを加速するもので「欧米から順次アジアなどにも展開を広げていきたい」(ムロジク氏)としている。
講演の最後にムロジク氏は「以前から自動化でNo.1と言ってきたが、現在は産業向けソフトウェアでもNo.1になっている。そんなシーメンスだからこそ、バーチャルとリアルを包括的につなぐことができる」と述べている。
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