NECは、今回の共同研究に最適な覚醒度推定技術を開発するために「まぶた揺らぎ」を特徴量として用いた。覚醒度を推定する手法は、本人申告による主観、機器操作などの行動情報、心拍やまぶたの動きなどの生体情報などがある。中でも、まぶたの動きを用いる技術は、自動車のドライバーモニターシステムなどにも採用されており、精度や利便性に優れている。ただし、閉眼時間や瞬き頻度といった素早いまぶたの動きを検出する必要があり、この場合数百msレベルの高速な画像処理が必要で、高性能のカメラやプロセッサなどが必要になるため機器コストも高くなりがちだ。
NEC バイオメトリクス研究所 主任研究員の辻川剛範氏は「今回採用したまぶた揺らぎは、まぶたの動きを検出する点では従来と同じだが、まぶたが開いている状態の変動(時間揺らぎ)や左右のまぶたの動きの差(左右差)という、人間がまぶたの動きとして故意に行うことが難しい特性を利用しており、推定に必要なデータ量が3分の1で済む」と説明する。
現在の実証実験では、インテルの超小型PC「NUC」を用いているものの、実用上は同じくインテルのスティック型PC「Compute Stick」で運用可能だという。さらに、検出アルゴリズムを最適化することで初期の「Raspberry Pi」レベルのシングルボードコンピュータを用いたIoT端末に適用可能にすることも視野に入れている。
これまでの実証実験は1人の被験者を対象に、模擬タスクとなる2桁の加算暗算を行わせる手法で実施してきた。2018年7月から、ダイキン工業のテクノロジーイノベーションセンター(大阪府摂津市)とNECの玉川事業所(川崎市中原区)の検証用オフィスで開始したフィールド実証では、実務を行う中での空調刺激と照明刺激による覚醒度の向上効果を確認していく。また、両社以外のフィールド実証のパートナーを募集し、実験規模を拡大したい考えだ。
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