パナソニックは2018年7月20日、技術セミナーを開催し100周年に際し新たに定めた「モノづくりビジョン」について説明した。
パナソニックは2018年7月20日、技術セミナーを開催し100周年に際し新たに定めた「モノづくりビジョン」について説明した。モノづくりのアジャイル化を進め、市場の反応を得ながら改善を進める新たなモノづくりの形を模索する。
パナソニックは2018年に創業100周年を迎える電機製造業である。グローバルで製造拠点は325拠点(国内126、海外199)あり、その中で「多様性に富んださまざまな種類のモノづくりをやっていることが特徴だ」とモノづくり技術を統括するパナソニック 執行役員 生産革新担当 兼 生産技術本部長の小川立夫氏は述べている。
実際にパナソニックでは、大量生産製品もあれば、少量生産製品もある他、さまざまな大きさやリードタイムの製品、受注型案件、B2BやB2Cの製品など、多彩な製品やサービスを展開している。それらを支えるモノづくり技術を培ってきたことが強みとなっている。
ただ、社会環境が大きく変化する中で、生産技術に求められる価値もさらなる進化が必要な状況になっている。日本政府なども新たな社会の在り方として超スマート社会の実現を目指す「Society 5.0」を訴えているが、モノづくりについてもIoT(モノのインターネット)活用が進む中でドイツのインダストリー4.0や日本の「Connected Industries」など、さまざまな概念が示されており、新たな対応が必要になっている。
その中でパナソニックでは「あらゆるモノとモノがつながるIoTの時代において、ハードウェアでもウオーターフォール型開発からアジャイル型開発への変化が必要になる」(小川氏)とし、これを実現するモノづくり体制構築の方針を示す。
「ウオーターフォール型」「アジャイル型」はそれぞれ主にITの開発方式を示す言葉である。「ウオーターフォール型」は仕様を決定してから順番に実装を進めていく開発方式で、確実にニーズを把握し製品仕様が見えている場合などには有効な開発手法である。一方で、現在はニーズが多様化し、製品を取り巻く環境も常に変化しているような状況で、これらの変化に柔軟に対応していくことが求められる。要件が常に変わるために、この柔軟性の面でウオーターフォール型は適合が難しい。
そこで工程の各段階で計画、設計、試作、評価のサイクルを回し、顧客の声を聞きながら仕様や実装の完成度を上げていくという手法が「アジャイル型」開発手法である。従来のモノづくりは、メーカー内で一貫して構想し、計画し、設計し、試作し、量産するというウオーターフォール型に近い形だったが「構想、計画段階から試作を早く行って顧客に見てもらい、本当に要望のあるものに作り直すという、顧客共創のサイクルを、工程内で何度も回すようにする。顧客が本当に必要なものを最速で実現するというモノづくりが求められる」と小川氏はアジャイル型モノづくりについて述べる。
パナソニックでは現状の課題感を示すのに、「タテパナ」と「ヨコパナ」という言葉を使用している。「タテパナ」とは従来型の組織で、事業部制などを示す。事業部ごとの製品、価格、競合、顧客接点、体験などを、それぞれの組織のみで作るという仕組みである。パナソニックの事業のほとんどはこの「タテパナ」によって生み出されている。しかし、顧客課題を解決するソリューション型提案を進める場合、この「タテパナ」だけでは要望を満たすことはできない。事業間を横断し最適化して提案する「ヨコパナ」の考え方が重要になる。
モノづくりでも同様で、「タテパナ」領域の従来価値として「QCD(品質、コスト、納期」を挙げる一方で、新たにデジタライゼーションのによる進化を加えていく方針を示す他、「ヨコパナ」では、新たに「0から1」「1から100」へと製品開発を加速させるマニュファクチャリングプラットフォームを構築する方針を示す。
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