あの衛星やロケットも? 日本の宇宙開発を支えるOTCのプリント配線板技術:メイドインジャパンの現場力(16)(3/3 ページ)
さらに、OTCの取り扱うプリント配線板は少量多品種製品であるため、どちらかといえば自動化が難しいが、その中でも工程ごとに大量処理できる領域をうまく組み合わせて、自動化をできる限り進めていることが特徴である。
プリント配線板の製造工程は、穴あけ、銅メッキ、回路パターン形成、積層、ソルダーレジスト、外形加工、検査などがあるが、各種の工程で全自動化を推進している。例えば、回路パターン形成ではダイレクトイメージ装置を導入し全自動化を実現。さらにソルダーレジスト工程でもダイレクトシルク印刷工程を全自動化しており、できる限り柔軟性は保ちつつも効率的な生産体制を実現できている。
クリーンルーム内に設置されたダイレクトイメージ装置。全自動で回路パターンの形成が可能だ(クリックで拡大)
その他、積層工程などもホットプレス機により作業の自動化を推進。増設なども進めているという。
積層工程に利用するホットプレス装置(クリックで拡大)
プリント配線板の導通を検査するフライングプローブテスターなども20台規模で稼働させており、導通試験も自動化を実現し効率化を実現している。
フライングプローブテスターも20大規模で導入。試験の自動化を実現している(クリックで拡大)
西村氏は「人材不足の影響は色濃く出ており、人でなくてもできる作業はできる限り自動化していきたい。工程の自動化はかなり積極的に進めてきたが、工程間の自動化はまだまだできていない。搬送など従来の間の工程の自動化は今後の検討課題だ」と述べている。
高信頼性や特殊用途向けを特徴とするため、さまざまな試験設備を保有しているのも強みだ。工程内を含めると3度の全数検査を行っており、品質には万全の体制を整えている。
人手による検査結果の確認の様子(左)と各種試験設備。特殊用途用なども備えているのが特徴(右)(クリックで拡大)
今後については「検査工程にはまだ多くの人員が必要な状況だ。外観検査などはAI(人工知能)を活用し、1次判断をさせるような仕組みの導入を検討している。共通領域はできる限り先進技術などを取り入れて自動化を進めることで高信頼性と効率化の両立を実現していく」と西村氏は考えを述べている。
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