国際的な宇宙ビジネス拡大を目指す法令の整備などが進む中、部品業界でも航空・宇宙領域がにわかに脚光を浴びている。その中で早期から航空・宇宙領域での実績を積み上げてきたのが、山形県鶴岡市のOKIサーキットテクノロジーである。
プリント配線板の設計、製造、販売を行うOKIサーキットテクノロジー(山形県鶴岡市、西村浩社長)は、航空・宇宙市場向け事業の売り上げ拡大を目指し、取り組みを強化している。2016年には日本アビオニクスから同分野向けプリント配線板事業の移管が決定し、2018年3月末までに移管を完了する予定だ。こうした体制強化により、航空・宇宙分野の売上高を2019年には4.5倍(2016年比)に引き上げる計画を示す。
OKIサーキットテクノロジーの前身は、1970年に名古屋市で創業した、田中貴金属工業とパイロットインキの合弁会社のパイロットケミカルである。その後、2012年に田中貴金属工業からOKIに事業譲渡され、OKIの100%子会社として再出発した。そして2014年にOKI田中サーキットから現社名に変更している。
OKIサーキットテクノロジーでは、これまで、通信機器、計測機器、防衛・宇宙、社会インフラ、半導体テスター、放送機器などでのニッチな市場向けを中心に、高品質、高信頼の多層プリント配線板を供給してきた。また、1987年に防衛省(当時防衛庁)認定を取得。2001年には宇宙航空研究開発機構(JAXA、当時はNASDA)認定を取得するなど航空・宇宙関連の要求事項に精通し、同分野で実績を残してきた。
技術面でOKIサーキットテクノロジーの強みでもある、フレキシブルプリント基板と通常のリジッド基板を組み合わせるフレックスリジット基板、大電流への対応が可能な圧銅技術は航空・宇宙関連需要に適合している。例えば、フレックスリジット基板はケーブルをつなぐコネクターのスペースが不要であるため、省スペース、軽量化が可能なメリットがある。さらに、振動や重力加速度に関係するコネクター接続の不安を排除できることから高い信頼性が得られる。また、同社のフレックスリジット基板は、フレキ3コア(6層)まで組み込むことができ(通常1コア)、複数のフレキコアの接続が可能である。信頼性もリジット基板と同等の品質を確立しているという。厚銅技術についても、配線板の放熱特性を向上させられることから、空気のない宇宙空間でのデバイスの排熱ソリューションに用いられている。
こうした技術に加えて少量多品種生産のビジネスモデルが航空・宇宙需要と合致しているところも、OKIサーキットテクノロジーが積極的姿勢を見せる要因だ。
航空・宇宙関連市場自体も、通信や放送、地球観測といった衛星需要が増加するなど世界的に拡大基調が見られる。日本でも宇宙開発への民間の参入を促進する「宇宙活動法」が2016年に成立するなど、市場の活性化が期待できる。こうした背景も追い風に、OKIサーキットテクノロジーでは、航空・宇宙関連市場向けの売上高を2016年の4億円(同社全体の売上高57億円)から2019年には4.5倍の18億円(同80億円)へと引き上げる計画を示している。
この事業拡大の柱となるのが2016年7月に発表した日本アビオニクスからのプリント配線板事業の事業移管である。それに伴いJAXA認定カテゴリーの追加や新規顧客の開拓、配線板EMS(電子機器生産受託サービス)の拡大などに取り組む方針を固めている。OKIサーキットテクノロジー 代表取締役社長の西村浩氏は「航空・宇宙事業は今後も大きく伸張することが予想される分野だが、新規事業者の活発な参入により、顧客ニーズも変化してくる。OKIサーキットテクノロジーは以前から保有している独自の技術に加え、日本アビオニクスより移管される技術にさらに磨きをかけ、航空・宇宙市場向けプリント配線板のリーディングカンパニーとして顧客のニーズに対応し、日本の航空・宇宙産業に貢献していく」と意欲を見せる。
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