日本でも注目されている糖尿病治療向けモバイルヘルスアプリケーションだが、米国ではリアルワールドエビデンスの質をどう上げるかが課題となっている。
日本でも注目されている糖尿病治療向けモバイルヘルスアプリケーションだが、米国では、リアルワールドエビデンスの質をどう上げるかが課題となっている。
2018年5月8日、米国保健福祉省(HHS)の医療研究・品質調査機構(AHRQ)は、「糖尿病自己管理用途モバイルヘルスアプリケーション」と題する報告書を公表した(関連情報)。
これに先立ち、AHRQは、2017年7月12日、モバイルヘルスの介入によるアウトカム評価研究の一環として、「糖尿病向けモバイルヘルス」と題する研究プロトコルを公表している(関連情報)。この研究では、急速なタイムラインで製品の開発・評価を実施し、糖尿病自己管理用途のモバイルヘルス利用に関するインフォームド・チョイス(説明を受けたうえでの選択)を行う意思決定者を支援することを目的として、以下のような質問項目を挙げている。
図1は、この研究の分析フレームワークを示している。調査対象製品は、成人の1型および2型糖尿病患者向け自己管理モバイルヘルスアプリケーションで、技術による相互作用、患者に重要なアウトカム、健康アウトカムまたはその他の文献調査結果の3つのカテゴリーについて検証している。
調査手法としては、意思決定者やステークホルダーへのインタビューの他、Ovid/Medlineおよびコクランデータベースの検索による系統的レビュー・技術評価を実施している。
2018年5月8日に公表された報告書では、6つの1型糖尿病向けアプリケーション(「Glucose Buddy」「Diabetes Manager」「Dbees」「Diabetes Diary」「Diabetes Interactive Diary」「Diabeo Telesage」)、5つの2型糖尿病向けアプリケーション(「BlueStar Diabetes」「mDiab」「NexJ Connected Wellness Platform-Health Coach + [NexJ]」「Gather Health」「WellTang」)について、表1のような形で要約している。
RHRQは、調査結果のポイントとして、以下のような点を挙げている。
糖尿病患者向け自己管理モバイルヘルスアプリケーションの数は増えているが、エビデンスについてみると、臨床評価指標の設定、分析手法の標準化などに課題があり、量、質ともに不十分であるとしている。
また、今回の報告書では、医療アウトカム研究が特定された前述の11のアプリケーションについて、セキュリティ/プライバシーポリシーの対応状況を整理している。ポリシーの有無を確認できないアプリケーションがあった他、同じアプリケーションでも、プラットフォーム(例.iOSとAndroid)によってプライバシーポリシーの内容が異なっていたり、サードパーティーの開発者のデータ利用に関する記述がまちまちで一貫性がなかったりするなど、個人データ保護上の課題が山積している。
本連載第28回で取り上げたように、モバイルヘルス機器・アプリケーションから生成されるデータは、リアルワールドデータ(RWD)/リアルワールドエビデンス(RWE)のソースとしても期待されており、エビデンスの継続的な構築/蓄積やセキュリティ/プライバシー対策の整備は欠かせない。
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