ブリヂストンは、モノ売りからコト売りへの移行やスマートファクトリーを中心としたデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の取り組みについて説明。単純にタイヤ製品の性能を良くしていくだけでは、新興メーカーとの差別化が難しい状況にあり、顧客の困りごとを解決するソリューションプロバイダーへの移行を進めているという。
ブリヂストンは2018年6月26日、東京都内で会見を開き、モノ売りからコト売りへの移行やスマートファクトリーを中心としたデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の取り組みについて説明した。
同社の約3兆6000億円の連結売上高(2017年度)のうちタイヤ事業が83%を占める。タイヤ売上高における世界シェアでもトップを維持しているが、2005年の18.2%から2016年には14.6%と漸減している。ブリヂストン 執行役員 CDO・デジタルソリューションセンター担当の三枝幸夫氏は「単純にタイヤ製品の性能を良くしていくだけでは、新興メーカーとの差別化が難しい状況にある。従来の製造販売業から、顧客の困りごとを解決するソリューションプロバイダーへ移行する必要がある」と語る。
ソリューションプロバイダーへの移行を進める上で、商品戦略から開発、調達、供給、販売、サービスに至るまでのバリューチェーンを有機的に連携できるようにして行かなければならない。「しかし、長い歴史の間に組織と人の分断が進んでしまった。メールにExcelファイルを添付して情報共有しているようでは、ソリューション提供などできない」(三枝氏)。そこで2015年ごろから、デジタル変革に向けたさまざまな取り組みを進めてきたという。
会見では、現時点でのデジタル変革の成果を大まかに分けて4つ紹介した。1つ目は、鉱山向け車両のタイヤやホイールの状態をリアルタイムに管理する「鉱山ソリューション」である。
鉱山の中では、鉱物資源などを運搬するために多数の大型車両が走行している。これらの車両がタイヤのパンクなどによって走行不能になれば、さまざまな支障をきたしてしまう。鉱山ソリューションでは、タイヤ、ホイールの在庫、装着、点検、ローテーション、修理、廃棄などの情報を一元管理する「TreadStat」や、鉱山向け車両のタイヤの空気圧や温度をリアルタイムに測定する独自開発のセンサー「B-TAG」などを用いて、そういった問題の発生を未然に防ぐサービスを提供している。また2017年11月には、鉱山ソリューションの初の拠点となる「ピルバラ マイニング ソリューション センター」をオーストラリアに開設した。
さらに、B-TAGなどから得られたセンサー情報を基に解析を行うことで、その結果を製品開発にも反映するビジネスサイクルを確立しつつあるという。
2つ目は、運送に用いられるトラックやバスのタイヤを再生するリトレッドを効率的に行う「運送ソリューション」になる。ブリヂストンは、リトレッドそのものの技術開発に加えて、リトレッド事業のグローバル展開に向けてリトレッドタイヤを管理するツールである「BASys」を開発している。三枝氏は「リトレッドでは顧客のタイヤが当社の工場に送られてくるが、このタイミングが顧客とのタッチポイントとして重要だった。そこで、運送ソリューションとしてデジタル化を進めることとした」と説明する。
運送ソリューションでは、まずBASysによってトレッドを張り替えるタイヤケースの検査情報の見える化を行う。タイヤケースがリトレッド後の利用に耐えられない場合は廃棄するが、タイヤブランド別の廃棄率やその理由なども明確に示される。「ブリヂストン製タイヤの廃棄率の低さから、『製品の性能を良くしていく』ことが見える化され、あらためて高い評価を得られるという流れも生まれている」(三枝氏)という。
この他タイヤ情報管理ツール「Toolbox」やリアルタイム遠隔モニタリングシステム「Tirematics」などによって、運送ソリューションは構成されている。
3つ目は、乗用車向けソリューションに活用できるセンシング技術「CAIS」である。タイヤの内部に組み込んだ加速度センサーにより摩耗状態の推定や路面状態の推定を行える。現在は、高速道路会社など一部顧客との実証実験を進めている段階だが「コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の言葉に代表される『CASE』を支える将来技術として提供できるようにしていきたい。特に、乗用車の個人所有からシェアリングへの移行が進めば、運送ソリューションのような形でのサービス提供が可能になるのではないか」と(三枝氏)としている。
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