トレーサビリティーへの活用では、個体単位やロット単位で蓄積された製造条件の情報を使って、次のような管理が可能となります。
まず大事なのは、個体、ロットごとにどんな製造条件で製造したか記録することにより良品は良品であること、不適合品が不適合品であり客観的かつ定量的な根拠を提示できることです。そのエビデンスは、設備から自動で収集していて、改ざんできないことが前提です。
例えば、温度などの重要な製造条件については上下値の管理により、製造過程で不適合な条件があればすぐにワーニングを出すことができます。このような機構は、当然設備にあらかじめ付いているものもありますので、設備で制御できない場合に考慮すればよいでしょう。さらに発展した活用としては、AIを使用して、同一工程や複数工程の製造条件値から良/不良を判断する尤度(ゆうど、もっともらしさ)を算出して、今まで見つけにくかった不良発生の判断に活用するといった例も出てきています。
これらのことを実現した上で、納入クレームや市場クレームが万が一発生した場合は、個体やロット単位で影響範囲の追跡を行います。全て、個体やロットにNo.が付与されていればすぐにひも付けできますが、それができない場合、物の流れで先入れ先出しが成立しているのであれば、時刻とサイクルタイムでひも付ける方法もあります。その際、以前の回でも取り上げていますが、各設備から収集する情報の時刻合わせが大事になりますので、ご注意ください。
生産指標管理への活用では、まず、工場の操業に支障が出ていないか「アンドン情報」を工場から離れた場所でも見られるようにすることです。前項でも触れましたが、設備保全の部署は工場から離れた所にあることが多く、自工程が停止した場合も前工程や後工程からアンドンの位置が見えにくく状況が理解できないことが多いのです。今は、現場には最小限の人しか残さない状況になってきていますので、問題が発生すると前後の工程間でも状況を把握して、臨機応変に動けるようにしたり、離れた場所にもタイムリーに異常を通知したりして、他部署からの応援をすぐに受けられるようにする必要があります。
次に、現場改善活動を促進するためには、生産管理指標管理を定着することが重要です。今までは現場で日報をつけて、各工程独自のルールでグラフをつけて管理する形態でした。これだと、定義や計算式を確認しないと分からないということになります。今は、国際標準規格のISO 22400の指標が出てきています。欧州メーカーでは、この生産管理指標を使ってどの会社と取引してもモノづくりの管理のものさしを統一することが可能になることもあって積極的に導入を進めています。
IoT活用により情報収集に対するハードルが低くなっているため、生産管理指標管理が定着しやすい状況にあります。有事の際に、自社のルールではうまくいっていると社会に向けて情報発信してもなかなか受け入れられません。客観性のある情報発信ができる仕組みを導入してはいかがでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.