特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

「製造業IoTは日本の強みの生かせる領域で」“つながる化”先進企業の考えハノーバーメッセ2018(1/2 ページ)

フランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は、ビル制御や工場オートメーション、エネルギーマネジメントなどの領域で、早期から“つながる化”による「見える化」や自動制御などへの取り組みを進めてきた。同社 インダストリービジネスのエグゼクティブバイスプレジデントであるPeter Herweck(ピーター・ハーウェック)氏に話を聞いた。

» 2018年06月08日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

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 フランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は、ビル制御や工場オートメーション、エネルギーマネジメントなどの領域で、早期から“つながる化”による「見える化」や自動制御などへの取り組みを進めてきた。同社は現在、より情報連携を容易にするIoTアーキテクチャ「EcoStruxure(エコストラクチャー)」を推進する。

 同社のIoTへの取り組みと日本企業へのIoTへの取り組みについて、日本での就労経験も持つシュナイダーエレクトリック インダストリービジネスのエグゼクティブバイスプレジデントであるPeter Herweck(ピーター・ハーウェック)氏にハノーバーメッセ2018の会場で話を聞いた。

 ハーウェック氏は、日本の三菱電機でソフトウェア開発エンジニアとしてキャリアを開始し、その後ドイツのSiemens(シーメンス)を経て2015年からシュナイダーエレクトリックで働くようになった、オートメーションの専門家である。

現在の“つながる化”がもたらす意味

 シュナイダーエレクトリックでは、1990年代後半にインターネットを利用してIPベースで、オートメーション機器から情報を取得する製品を開発。早くから現在のIoT(モノのインターネット)の原型のような取り組みを進めてきた。現在のIoTやスマートファクトリー化の動きについてハーウェック氏は「シュナイダーエレクトリックも含めて、産業領域での『つながる化』の取り組みは30〜40年前から存在した。それはIoTではなかったがフィールドバスなどを活用してPLCやCNCの情報を取得し『見える化』を行うような現在と目指すものはあまり変わっていない」と述べる。

photo シュナイダーエレクトリック インダストリービジネスのエグゼクティブバイスプレジデントのピーター・ハーウェック氏

 一方で当時と現在については3つの大きな違いがあり、それがさまざまな変化を加速させているという。「現在のIoTの動きで大きな変化は、1つが通信容量の拡大である。膨大なデータの送受信が高速で行えるようになった。2つ目がクラウドなどを含めた無制限のストレージだ。データ容量を気にせずにデータを取り続けることが可能になった。そして3つ目がソフトウェアコンポーネントの容易な活用である。さまざまな機能を『アプリ』としてのパッケージで提供できるようになった。こうした3つの変化が、過去の動きとは大きな違いを生み出している」とハーウェック氏は現状のIoTの動きについて語る。

 そして、こうした3つの動きによって、ソフトウェアやデータの比率が高くなり、これらを効果的に活用するためのプラットフォームが重要になる。「従来の制御システムもなくなるわけではない。ミッションクリティカルな対応が要求される安全領域での制御については変わらず従来型システムが使われるだろう。ただ、その比率は徐々に小さくなっている。オープンな環境でネットワークとつなげることで得られるメリットの方が大きい領域が生まれる。この中でIoTプラットフォームなどが注目を集めている」とハーウェック氏はIoTプラットフォームについて述べる。

“アーキテクチャ”としての「エコストラクチャー」

 シュナイダーエレクトリックでは、容易に新たな「つながる世界」を実現するIoTプラットフォームとして「エコストラクチャー」を展開。「エコストラクチャー」では、「ネットにつながる製品群(コネクテッドデバイス)」「エッジコントロール」「アプリ、アナリティクス、サービス」の3層で捉えている。

 ただ、シュナイダーエレクトリックとしては「エコストラクチャー」を「プラットフォーム」ではなく「アーキテクチャ」としているという。ハーウェック氏は「さまざまな産業での変化が進む中で1つのプラットフォームで全ての業域をカバーするのも難しい。その中で『エコストラクチャー』は多くの産業の壁を越えて、どの産業でも利用できるプラットフォームよりも抽象度が高いものだ。プラットフォーム間の連携などにも活用できる」と位置付けを述べる。

 そして、産業ごとの状況に対応するために用意したのが、6つの注力ドメインである。これは産業ごとに最適化したテンプレートのようなもので現状では「ビルディング」「パワー」「IT」「マシン」「プラント」「グリッド」の6つを用意している。

photo 「エコストラクチャー」の構成(クリックで拡大)出典:シュナイダーエレクトリック
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