加藤氏が発見した南鳥島EEZのレアアース泥は、約3年間の航海調査により概略探査はほぼ完了している。有望海域とされる315km2だけで、国内のレアアース需要を200〜3000年分賄える資源量の存在を確認している。さらに興味深いのが、新素材として注目されているスカンジウムも大量に含んでいることだ。スカンジウムは、固体酸化物形燃料電池の電解質材料として期待されている他、アルミニウムとの軽量高強度合金も実現可能である。そのスカンジウムの資源量は、現在の世界供給量の1万年分に達する。
レアアース泥の産業活用を目指すべく、2014年には「レアアース泥開発推進コンソーシアム」が結成された。参加企業・機関の数は、当初の11から現在は32まで増えている。加藤氏は「世界初の海底資源開発への期待は高まっている」と強調する。
多くの可能性を持つレアアース泥だが、最大の課題は5000mを超える海底にある泥を海上に引き揚げる採泥・揚泥の技術開発になる。圧縮空気を海底に送り込んで揚泥するエアリフト方式の技術開発が進められており、今後はコンソーシアムに参加する企業・組織や政府が推進するプロジェクトによる実証実験の段階に移行することになる。
また、レアアース泥の経済性も課題になる。技術開発のための投資コストや、その後の運用コストを試算しているが、レアアース含有量が5000ppm以上のレアアース泥であれば、現在の陸上鉱山のレアアースと同程度の価格を実現できる。「さらに、レアアース泥から得られるレアアースの品位を高める『粒径選鉱』という技術により、レアアース含有量を1万ppm以上に高められる。海底で粒径選鉱できれば揚泥量も減らせる、つまりコストも下がる」(加藤氏)という。
経済性の観点では、南鳥島EEZのレアアース泥が存在する海底で発見されたマンガンノジュールの同時採掘にも可能性がある。このマンガンノジュールには、コバルト、ニッケル、銅、モリブデンなどが多く含まれており、レアアース同様に資源として活用すれば、さらにコストを低減できる。
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