「LED発祥の地」が目指す世界展開――LEDバレイ構想(徳島県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第11回。LEDを活用した技術集積、応用製品による世界展開、街のにぎわいの演出に取り組んでいる、徳島県の「LEDバレイ構想」を取り上げる。

» 2018年02月07日 09時00分 公開
[MONOist]

イノベーションの概要

 徳島県は、高輝度青色LEDを世界で初めて製品化したLED発祥の地。2005年12月、「LEDと言えば徳島!」を掲げ、21世紀の光源であるLEDを利用する光(照明)産業の集積を目指す「LEDバレイ構想」を策定した。

 2005年当時は10社であったLED関連企業は、2010年には100社を超えた。照明器具、サイン・ディスプレイ、素材・部品デバイスのほか、植物工場などの新用途、画像処理・計測装置、イルミネーションなど、幅広いメーカーが含まれている。2013年に徳島県工業技術センターに開設した「LEDサポートセンター」には、国内最高レベルの性能評価体制があり、技術相談から光学性能、安全・環境性能試験まで、トータルで対応。公設試験研究機関では初となる国際規格ISO17025に適合した試験所でもあり、国際競争力の向上を支援する。

 2011年以降は毎年1回、LEDの新分野への応用研究や最新の技術動向を紹介する「LED総合フォーラム」を開催。また2015年に新宿(東京)で開催した「LEDバレイ徳島フォーラム」では、県内企業の高品質なLED応用製品を紹介し、11カ国の駐日大使館関係者などとも交流するなど、国内外に発信した。現在新宿には、首都圏向けの発信基地として「LED応用製品東京常設展示場」も開設されている。2012年には、優れたLED応用製品を県が認証する「とくしまオンリーワンLED製品認証制度」を創設し、認証マークを表示するなどしてPRをしている。

 徳島大学などの医工連携、農工商連携戦略プロジェクト「LEDライフイノベーション研究プロジェクト」では、産学官連携によって新たなLED応用製品が開発されている他、基礎医学、臨床医学分野での研究も進んでいる。徳島県立農林水産総合技術支援センターでは、農林水産分野におけるLED応用技術を開発。また阿南工業高等専門学校では2012年度から、同校が持つ実践的な教育資源を活用して「LED関連技術者養成講座」を開講し技術者を養成している。

 県内でも積極的にLED技術を活用し、2013年には、全国初の「歩行者用信号機完全LED化」を実現。県道の道路照明灯やトンネル照明のLED化も進めている。「障害物表示灯用LED電球」や「歩行者信号機用ユニバーサル押しボタン」などの開発にも取り組み、徳島ならではの都市づくりを推進している。

 2015年からの4年間は飛躍期「ワールドステージ」としており、2018年はその最終年である。ワールドステージの基本方向は「世界に向けた『LEDバレイ徳島』の新たな挑戦」で、「高品質なLED応用製品の『海外市場への展開』やLEDの『新用途開発・応用研究』の推進、LED関連企業の『集積拡大と相乗・連携効果』の発現により、『LEDバレイ徳島』の世界展開を目指す」としている。

LEDバレイ構想策定からのフェイズ LEDバレイ構想策定からのフェイズ

イノベーションの地域性〜徳島といえば……

 徳島県といえば、阿波踊り、鳴門の渦潮が有名だろう。しかし、「阿波藍(あい)」と呼ばれる藍染、国の伝統的工芸品にも指定されている「阿波和紙」、「大谷焼」、「阿波正藍しじら織」など、すぐれた伝統工芸品もあり、和紙や陶器とLEDを組み合わせたインテリアも商品化されている。

徳島といえば阿波踊り 徳島といえば阿波踊り

 お遍路さんの「四国八十八カ所」になぞらえて、LEDを効果的に取り入れた「光の名所」と呼べる場所やモニュメントを「光の八十八カ所」として認定。これらは通年で楽しめる他、クリスマスや年末年始など、期間限定のイルミネーションもある。2010年以降は3年に1回、「徳島LEDアートフェスティバル」を開催し、LED技術とアートが融合した独特の世界を発信している。

ここに注目!編集部の視点

 1993年、徳島県の地元企業が「20世紀中の開発は困難」と言われていた青色LEDを世界で初めて製品化した。2008年、国は国内大手家電メーカーに対し、2012年までに白熱電球の生産・販売を自主的にやめるよう要請。そして2014年、赤粼勇氏、天野浩氏、中村修二氏の「青色LEDの開発と量産化」が「ノーベル物理学賞」を受賞した。

 LEDの発展、普及は目覚ましく、あっという間に当たり前になった。しかしある調査機関によると、世界的なLED化は2015年時点で15.1%、2020年でも約4割との予測が示されている。まだまだ世界市場には大きな伸びしろがあり、医療、農業、漁業など、幅広い分野に活用される可能性は計り知れない。当然グローバルな競争も激しくなっていくが、「LED Valley TOKUSHIMA」としてLEDの開発や応用をけん引してくれるに違いない。

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