午後4時、いよいよ決勝レースがスタート。ローリングスタートをよく分かっていなかったドライバーがいたのか、中盤あたりで大きく間隔があいてしまっていた。まぁこちらは最後尾、無事スタートしてくれるだけでいい。
ところがわがチームも前走車と大きく間隔が空いてしまい、単独走行に。このせいでラップを刻み始めても西坂選手のタイムが思うように上がらない。最初の数周は仕方ないとしても、その後も想定よりタイムがなかなか縮まらない。
「最後尾で前走車に差をつけられてから、ペースが分からなくなってしまって……」と振り返る西坂選手。直前のハプニングで余裕を失ってしまった上に、隊列が伸びたためわずか数周でトップグループが後方から迫ってきた。そのためペースの異なるクルマとの接触を避けるために気を使うことになり、落ち着く暇もなかったことだろう。
そこで、このまま走らせてもドライバーのストレスも相当なものであると考え、当初より少し早めにピットインさせるよう作戦を変更した。当初は5人のドライバーで均等な時間を走行するよう想定していたが、少し早めに入っても1人当たりの連続走行時間の上限である50分を超えることはないからだ。
2番手の柿澤選手にドライバーチェンジ。さすがは現役、公式練習とは違うグリップレベルの高さにすぐに慣れ、メキメキとタイムを上げていく。後からオンボードカメラの映像を見ても、操作に安心感があり、まったく危なげなところがない。最初はタイヤのグリップを伺いながら徐々にペースを上げ、10周を越えたあたりから本領発揮。いよいよ、他チームを追撃するのだった。
西坂選手が想定より好燃費だったこともあり、ブレーンの松本氏は燃料に余裕があると判断してペースアップの指示を出す。すると、それに応えるようにトップチームと同等のタイムまで上昇、ついには1分13秒台をたたき出す。これはその時点のベストラップで2番目に速いタイムだった。
上位チームを含めてかなりのマシンを抜いたのだが、周回遅れになっていたので思ったほど順位は上がらず。それでも最後尾から3番ほどポジションを上昇させて、3番手の山口選手にドライバーチェンジを果たしたのであった。
山口選手は若手らしく、果敢にコーナーを攻めてタイムを刻んでいく。しかし実戦経験はまだ少ないため、タイムの安定性と絶対的な速さでは若干、柿澤選手に及ばないようだ。オンボードカメラの映像を見ていると、走行中に何度かシフトノブを指でペンペンとたたく様子が何とも面白い。
「シフトが入らなくなってしまって、思わず自分を鼓舞するようにノブをたたいたんです」(山口氏)。昨年もこのレースに出場し、直近では最も筑波サーキットを走っていることもあって、ワイドなラインでコーナーを駆け抜けていく。それでも終盤はタイヤがタレてきたため、徐々に怪しい挙動が……。そして30周を迎える頃、1コーナー出口でコントロールを失いかけた。
「あっぶね〜」と、風切り音でほとんど聞こえないはずの音声が聞こえることから、彼の叫びぶりが分かる。それでも、そんな状態の3周後には自身のベストラップを刻むなど、怯まずアタックを続けるあたりが若い!
そんな山口選手もほぼ予定通りの38周を回ってピットイン。いよいよ筆者が4番手として乗り込む番である。このドライバー交代時に20l(リットル)の給油作業を行うので3分のピットストップが義務付けられており、余裕のピット作業となるハズだった。
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