一方、日本の状況についてSBドライブ 社長兼CEOの佐治友基氏は「日本も早くはないけど遅れてもいない。ルールメークができている」と評価する。国土交通省や警察庁は、自動運転の実験をオープンに実施するための施策を展開しているし、対応も早いという。
例えば、自動運転の実験車のナンバープレートを取得するための申請に対する対応も非常に速い。また、道路使用許可を1度申請すると半年は利用可能となっており、非常に優遇されているそうだ。
ただし、これはあくまでも実験のためであり「商用化や実用化のためのガイドラインはまだ日本でも整備されていないところに課題がある」と佐治氏は指摘する。というのも、ライドシェアがある他国とは異なり、日本が世界で最もドライバー不足で困っており、その結果、移動弱者が増えているというのだ。そして、日本で自動運転車が実用化されないと、移動できない人たちがさらに増加すると危機感を募らす。
そのような状況下において、キャンベル氏と佐治氏は「ライドシェアで収益をあげているところはない」ことに言及した。そして佐治氏は「ウーバーも稼働率や平均輸送人数を上げる工夫が必要」であると指摘した。同氏によると、例えば東京ではタクシーを多く見かけるが、平均乗車人数は1.8人で、乗客を乗せている時間は30%程度にとどまり、残りの70%は流し営業だという。また、タクシーが国内で25万台運用されているのに対し、路線バスは6万台にとどまるものの年間輸送人口はタクシーの3倍に達することも挙げた。
ここで、効率性を追求できるのは自動運転シャトルバスだと佐治氏は主張する。同氏は、幹線道路については運用効率上もサービス面でも有人バスの方が良いとしつつも、ラストワンマイル(バス停を降りてから目的地まで)は、自動運転シャトルバスの方が収益が上がると強調する。
また、Future Mobility SummitのDay 2の基調講演に登壇したNTTドコモ社長の吉澤和弘氏も「次世代モビリティ」の取り組みの1つとして「次世代交通」を挙げている。次世代交通とは、地方における公共交通空白地域や都市部における渋滞への対応、さらには観光需要の増加への対応などにAI(人工知能)タクシー、AI運行バス、自動運転バスを活用していこうという取り組みである。さらにNTTドコモは2017年11月から、カーシェアとレンタカー、マイカーシェアを同一プラットフォーム上で利用できる「dカーシェア」の提供を開始すると発表した。コネクティビティを軸に、AIやIoT(モノのインターネット)を活用した新たなサービスを多角的に提案する。
他社とは異なる形でMaaS市場にアプローチしているのがOSVehicleだ。同社は業務用車両を利用する企業向けにホワイトレーベルの自動車を提供している。モジュール式のため、デザインや仕様などをそれぞれの顧客向けに、低価格かつ短納期で完全にカスタマイズできる点が特徴だ。
カスタマイズはタクシーからライドシェア、宅配に至るまで、好きなアプリケーション(業務用途)にあわせて実現できる。これは顧客にとって非常に重宝される。というのも、モジュラー式のため、自社専用車を簡単かつ安価に入手できるだけでなく、万が一故障などの不具合が発生した場合も、当該箇所のみをモジュラー変更すれば良いため、車体のライフスパンも非常に長い。「この特徴はライドシェアにおいても重宝される」とOSVehicle 創業者兼CEOのTin Hang Liu氏は語る。
Liu氏は「(シェアリングのように自動車を)所有しない場合は自動車を大切に扱わない。欧州で成功しているカーシェアでもさまざまな問題が生じている。車両を所有した場合の寿命が10年だとすると、カーシェアで多く利用された場合の寿命は2年未満だ。数千の車両を2年程度で廃棄することになる。これは財務的にも環境的にも非現実的だ」として、モジュラー式であるが故のアドバンテージを強調する。
また、どこを走行するかによっても必要となる自動車が変わってくるとした。都市によっては道路が狭いところもあり、そのようなところでも走行可能な車両が必要となる。このように活用領域によって必要とされる車両は異なり、そのようなニーズに対応可能な車両を製造できる同社は重宝されるだろう。
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