トヨタが2018年3月期の見通しを上方修正、2期連続の減収減益を回避製造マネジメントニュース

トヨタ自動車は、2018年3月期第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比8.6%増の14兆1912億円、営業利益は同1.8%減の1兆965億円、当期純利益は同13.2%増の1兆713億円となった。販売面の影響や諸経費の増加から営業利益が減少した。

» 2017年11月08日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
トヨタ自動車の永田理氏

 トヨタ自動車は2017年11月7日、東京都内で会見を開き、2018年3月期(2017年度)の第2四半期(4〜9月期)決算を発表した。

 売上高は前年同期比8.6%増の14兆1912億円、営業利益は同1.8%減の1兆965億円、当期純利益は同13.2%増の1兆713億円となった。販売面の影響や諸経費の増加から営業利益が減少した。

 2018年3月期通期の業績見通しは、欧州市場などでの販売拡大や収益改善活動の成果、為替の影響を織り込み、上方修正した。売上高は前回の予想から据え置き、前期比3.3%増の28兆5000億円とした。営業利益は前回の予想から1500億円増で前期比0.3%増の2兆円、当期純利益は前回の予想から2000億円増で前期比6.5%増の1兆9500億円を見込み、2期連続の減収減益を回避した。

 2018年3月期通期の連結販売台数は、当初の見通しから5万台増の895万台を見込む。日米で1万台ずつ、欧州は3万台の増加を見込む。

日欧で販売増、北米は厳しい環境続く

 2017年4〜9月の連結販売台数は前年同期と比べて2万6000台多い438万9000台だった。日本向けが同9000台増の108万7000台、「C-HR」が好調な欧州で同3万5000台増の46万9000台と増加し、けん引した。一方、北米は前年同期比4000台減の139万6000台、アジアも同2万1000台減の74万4000台に減少している。

 日本の販売の状況について、取締役副社長の永田理氏は「日本のお客さまには、新たに導入したモデルが好評だ。『ルーミー』『タンク』のような、小さい箱型のクルマに対する引き合いが強く、国内販売を支えている。C-HRのような性能やデザインに振ったモデルも好評だ。販売店の店づくりの努力も奏功した。求められるモデルをタイムリーに投入することと、消費マインドの改善が相まって、国内市場を改善していくチャンスがあるとみている」と説明した。

 一方、北米の営業利益は、販売諸費用の増加や「カムリ」の切り替えによる一時的な現地生産台数の減少によって、前年同期から1556億円のマイナスとなった。

 米国市場について永田氏は「乗用車からSUVへの需要のシフトがまだ続いている。リース期間満了した乗用車も市場に戻ってきており、乗用車の中古車価格を押し下げている。こういった状況は今後2〜3年続くので、チャレンジングな状況となる」と説明した。

 「とても厳しい状況の中でインセンティブを改善し切れていない車種もある。リース満了時の再販価格の残価設定を市場を踏まえて適正化するなど、金融事業の改善を進めている。新型カムリがインセンティブを抑制に貢献している。売れ筋の『ハイランダー』『RAV4』『タコマ』『C-HR』の供給能力を増強しているので、下期や来期に向けて収益力を高めていきたい」(永田氏)。TNGA(Toyota New Global Architecture)の新モデルの投入も原価改善につながる。

 中国市場について専務役員の大竹哲也氏は「全体の市場規模は2940万台程度、前年比5%増程度の見通しだ。われわれは2017年1〜10月では107万台で前年比8%増だった。『レビン』『トレノ』など新製品が好調で、台数を増やすと同時に収益に貢献している。インセンティブなど販売費用が発生している他、為替などマイナス要因はあるが、堅調に利益が出ている」と説明した。

営業利益は「実力で見ればまだまだ」

 2017年4〜9月期の営業利益は、原価改善によって1000億円を稼ぎ出したものの、販売面の影響と諸経費の増加分など2100億円が利益を圧迫。円安による為替影響を除くと1100億円の減益となった。

2018年3月期通期の営業利益の増減要因。前期差(左)と当初の見通しとの差(右)(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 「こうした結果は米国での収益悪化による影響が大きい。販売金融やインセンティブの在り方の見直しに加えて、TNGAの新モデルの投入、SUVやピックアップの供給能力強化によって改善努力を重ねている。また、テキサス州に北米法人の新本社を移して、関係部署が集まることにより、迅速によりよい意思決定ができるようになった」(永田氏)

 2018年3月期通期に向けては収益改善活動により、為替影響を除いた営業利益は前回の予想から850億円のプラスとなる。対前期比では、為替影響を除いた営業利益は1850億円の減益だが当初の見通しから1150億円改善した。「通期の業績見通しは営業利益2兆円に上方修正したが、為替変動の影響が大きい。実力としては前期比1850億円の減益なので、まだまだだ」(永田氏)。

 原価改善の重要性について「短期的な収益に影響が出るだけではない。中長期で見ると、自動運転技術や燃料電池車、電気自動車、コネクテッド技術といった先端技術の製品化に必要な研究開発費や設備投資が負担になるだろう。これらをやり通せるだけの原資を既存事業で稼ぎ出すために原価改善が重要視になってくる」と永田氏は説明した。

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