sigfoxやLoRaWANが注目されているLPWAネットワークだが、まだ日本国内に入ってきていない規格もある。アンジェヌ(Ingenu)が展開する「RPMA」は、1つの基地局で21km四方をカバーできるとともに同時接続数の多さを特徴とする。従来のプライベートネットワーク向けの展開に加え、2016年からパブリックネットワークのサービス提供も始めた。
2017年後半になってから、国内でもLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークに関する動きが急速に盛んになっている。EE Times JapanのLPWAに関する記事の一覧をごらん頂くとお分かりかと思う。ただ、sigfoxやLoRaWANが今は注目されているが、まだ国内に入ってきていない、全く別のLPWAの規格もある。今回はそうしたものの1つ、RPMAをご紹介したいと思う。
実はRPMA(Random Phase Multiple Access)という名称は、厳密には変調方式を含む通信方式の技術的な名称であって、通信方式の総称とするのはどうか? という気もする。またかつてはOn-Rampの名前で普及したこともあり、いまだに“On-Ramp RPMA Wireless”なんて文言を目にすることもある。ただし、アンジェヌ(Ingenu)自身がRPMAを通信方式の総称として使っているので、ここでは一応RPMAで以後通すことにする。
さてそのRPMAを開発したのは、2008年にサンディエゴで創業されたOn-Ramp Wirelessである。2012年に完成したこのRPMAを使い、同社は38の事業者に対してプライベートなLPWAネットワークを提供してきた。そのOn-Ramp Wirelessは2016年に方針を転換、プライベートネットワークだけでなく、パブリックネットワーク向けにもサービスを提供することを決める。このタイミングで社名もアンジェヌに変更している。
さてそのRPMAとはどんな技術なのか。核になる部分はOn-Rampの時代に同社が32の特許を取得して固めており、その意味ではオープンな規格ではない。その特徴はアンジェヌ(というか、On-Ramp)が、以下のような内容で公開している。
ちなみに低速な分、個々のデバイスの電池寿命は長く、単三電池1本で10年以上の動作が可能としている。
sigfoxやLoRaWANに比べて大きな特徴は、その基地局1つでのカバレージの広さと同時接続数の多さである。基地局1つで理論上は数万のデバイスを接続可能なので、広大な地域の接続を最小のコストでカバーすることができる。実際、On-Rampの時代、同社のターゲットはエネルギー会社(日本で言うならガスや水道、電気の供給会社と、油田などのエネルギー採掘会社やパイプラインの管理会社)であった。176平方マイルというのは13マイル(約21km)四方で、ほぼ直径24kmほどの円ということになる。東京で言うなら、皇居を中心に環七を越えて環八近くまでを覆う円の範囲を1つの基地局でカバーできるのだから、これは非常に費用対効果が高いのがお分かりいただけるだろう。
もちろんこれは理論上の話であって、仮に実際に皇居にRPMAの基地局が立ったとしても、せいぜいカバーできる範囲は皇居のお堀の周りだけ、というあたりだろう。2.4GHz帯は直進性が高いから障害物には非常に弱い。アンジェヌ自身、176平方マイルのカバーレンジは都市部(Urban)としているが、彼らの言うUrbanは高層ビルなどがあまり無い、平野部で広い範囲に平屋の住宅が散らばっているというアメリカの都市近郊をイメージしたもので、日本などではもっと基地局の数を増やさないと同等のカバー率を確保するのは難しいだろう。
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