特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

中小製造業にこそおいしい「IoTレシピ」と「IoTツール」、RRIが募集結果を公表製造業IoT

経済産業省などが主導するロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は、中堅中小製造業向け「IoTツール&レシピ」の第2回募集結果を発表した。結果は「スマートものづくり応援ツール・レシピ」として公表し、スマートモノづくり応援隊などで活用していく。

» 2017年10月11日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 経済産業省(経産省)などが主導するロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は2017年10月4日、中堅中小製造業向けの「IoTツール&レシピ」の第2回募集結果を発表した。結果は「スマートものづくり応援ツール・レシピ」として公表し、スマートモノづくり応援隊などで活用していく。

中堅・中小製造業がもっとIoTと使うために

 インダストリー4.0やスマートファクトリーなど製造業におけるIoT(モノのインターネット)活用が広がりを見せている。一方で中堅・中小製造業にとっては、IoTに必要なIT(情報技術)関連人材の不足や、資金面での負担などが大きく、なかなかIoTを自社業務に積極的に取り入れることが難しいという状況が生まれている。

 こうした状況は、日本だけでなくドイツなど世界的に見ても同様の傾向が生まれている。第4次産業革命に向けては日独間では閣僚級の連携を発表しているが、その連携の大きなテーマの1つが中堅・中小製造業のIoT活用であるからだ。中堅・中小製造業をどのように負担なくIoT活用に導けるかという点は、製造業のサプライチェーンを考えても重要なポイントになっている。

 こうした課題を解決するために、RRIでは、「IoTによる製造ビジネス変革WG」内に中堅中小企製造業のIoT活用を支援するアクショングループ(AG)を設置。地方において製造業のIoT活用を支援する「スマートモノづくり応援隊」の設置を進めてきた他、2016年には第1回となる「中堅・中小製造業向けIoTツール募集イベント」を行い、中堅中小製造業でも利用可能なIoTツールを募集した(※1)。結果として106件のIoTツールが集まり「スマートものづくり応援ツール」として啓蒙を進めている。

(※1)関連記事:中小製造業がIoTをバリバリ使いこなせるツール、106件が選定

 「中堅・中小製造業向けIoTツール募集イベント」では、中小製造業である錦正工業の代表取締役社長 永森久之氏、今野製作所の代表取締役社長 今野浩好氏、浜野製作所 代表取締役社長 浜野慶一氏、武州工業 代表取締役 林英夫氏の他、大手車載部品メーカーの小島プレス工業 総務統括部参事 兼子邦彦氏など、実際にツールを使う側の企業が参加し、委員として選考を行っていることが特徴である。

IoTツールとIoTレシピの結果

 第2回となる今回の募集は中堅中小製造業が使いやすい「IoTツール」に加えて、これらのツールをどう活用するかという点を取り上げた「IoTレシピ」の募集も行い、最終的に96個のツールと28個のレシピが選ばれた。これらのツールとレシピは「スマートものづくり応援ツール・レシピ」としてユースケース別で公開されている(※2)

(※2)関連リンク:「スマートものづくり応援ツール一覧」と「スマートものづくり応援レシピ一覧

photo スマートものづくり応援レシピ(クリックでWebサイトへ)出展:RRI

 これらの選ばれたツールとレシピの中で、主な選考委員が特に気になった15のツールと7つのレシピについて紹介している。

 錦正工業の永森氏が選んだのが、Fiotの「Fiotデバイス」とアンビエントデーターのIoTデータ可視化サービス「Ambient」、伊藤ソフトデザインの「irBoard」、ソフィックスの「SOFIXCAN Ω Eye」の4つのツールと、凡建大阪製作所のIoT現場管理システム「Work Watch」の1つのレシピである。

 永森氏は「IoTが身近に感じられ試しに導入しようという気になるツールが増えてきたように感じている。今まで人間が計測して入力していた作業のIoT化やIoTの技術により実現できることなど、領域も広がってきた」とコメントしている。

 今野製作所の今野氏が選んだのが、スリーアップ・テクノロジーの「後付けできる生産設備の見える化ソリューション」、シュナイダーエレクトリックホールディングスの「マルチデータボックスMDBで装置データをまとめて収集」、スタディストの「Teachme Biz IoT連携(仮称)」の3つのツールと、ITC-Pro東京の「NFCカードを活用した出荷管理システム」という1つのレシピである。

 浜野製作所の浜野氏は、シチズンマシナリーの「alkartoperation(リモート画面操作機能)」とSOOPのデータ連携エンジン「SXP」という2つのツールと、オークマの「地域専門商社のビジネスモデル有効性実証実験用ツールとレシピ」というレシピを挙げた。

 武州工業の林氏は、個人の長坂喜久氏が開発した業務改善IoTツール「小型カメラ、Wi-Fi無線内蔵LED照明システム」とピクスーのIoTセンサー「Webiot(ウェビオ)」、dotstudioの「Nefry BT」の3つのツールを選んだ。さらにレシピとしてはi Smart Technologiesの「人が高付加価値の仕事に注力するためのレシピ」と、飯山精器の稼働監視システム「is-Look」を挙げた。

 小島プレス工業の兼子氏は、フェニックスソリューションの「金属背面からも読み取り可能なRFID 金属タグ」、選考委員でもある武州工業の配線レス設備情報収集ツール「生産性見え太」という2つのツールを挙げている。

 中堅中小企製造業AGの主査である法政大学 大学院 デザイン工学研究科 客員教授の松島桂樹氏は、IoTツール1つとIoTレシピを2つ挙げた。ツールとしてはジェイテクトのスマートファクトリー関連機器群である「TOYOPUC-Plus」「TOYOPUC-AAA」「JTEKT-SignalHop」を選んだ。レシピとしては、シュナイダーエレクトリックホールディングスの「新旧の設備データを簡単に収集し、生産情報を活用」するもの、三菱電機の「装置トラブルの原因調査を迅速に、データの確認作業を効率化」を挙げている。

 松島氏は「中小企業も巻き込んだ事例づくりの時期になっていると感じた。もはや大企業も中小企業もなく、自社に役立つ価値あるツールや、その具体的なイメージがつかめるようになったと(変化を)痛感している」とコメントしている。

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