IoTおよびインダストリー4.0に関する日本とドイツの連携が進んでいる。ハノーバーメッセ2017では、第11回となる日独経済フォーラムが開催されたが、その中で日本およびドイツ政府のキーマンが連携を通じた価値について紹介。「中小企業」「セキュリティ」「標準化」の3つの課題について言及した。
ハノーバーメッセ2017(2017年4月24〜28日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において2017年4月26日、第11回となる「日独経済フォーラム」が開催された。毎年、日本とドイツの両国が関係するさまざまな経済トピックを取り上げているが、ここ数年は「インダストリー4.0」がテーマ。今回は特に2016年から本格化した日本とドイツの連携の成果について紹介した。
2017年3月に開催されたドイツのIT国際見本市「CeBIT」では日本がパートナーカントリーを務めたこともあり、日独首脳会談も開催。新たに「ハノーバー宣言」を発表し、2016年4月に発表した次官級の共同声明を閣僚級へと格上げした。
そもそもの日本とドイツの第4次産業革命による協力は2015年3月にドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏が訪日した際から本格的に始まり、2016年4月には次官級での共同声明「IoT・インダストリー4.0協力に関する共同声明」を締結。「産業向けサイバーセキュリティ」「国際標準化」「規制改革」「中小企業に対するIoT支援」「IoTおよびインダストリー4.0に対する研究開発」「人材育成」の6つの項目において、具体的な活動を進めてきていた。「ハノーバー宣言」では、これをさらに拡大し、以下の9項目での協力を発表している※)。
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「ハノーバー宣言」で示された内容に関する協力については今後具体化してくるが、今回の日独経済フォーラムでは、2016年4月から進められた「IoT・インダストリー4.0協力に関する共同声明」による連携による「中間レビュー」をテーマとし、日本政府からは経済産業省 製造産業局 審議官(製造産業局担当)の佐藤文一氏、ドイツ連邦政府からは経済エネルギー省 産業政策局 局長のウォルフガング・シェレメト氏が登壇。連携本格化から1年が経過する中、それぞれが得た価値や課題について3つの切り口で紹介した。
IoTによる産業の変革を進める上で、日本とドイツ双方で大きな課題として認識されているのが「中堅中小企業のIoT対応」である。インダストリー4.0をはじめIoTを活用したビジネスモデル変革の動きで全てにおいてカギになるのが「つながる」ということである。製造業においては、社内のエンジニアリングチェーンを結ぶことと同様に、企業間のサプライチェーンを結ぶことが重要な意味を持つ。この流れに取り残されると懸念されているのが中堅中小製造業であるというわけだ。
これらの課題認識のもと、2016年4月の共同声明でも、連携して取り組むべき課題として中小企業への取り組みが挙げられ、両国でさまざまな取り組みを進めてきた。その中で、シェレメト氏が1つの成果として挙げたのが「デジタルマッピングの連携」である。
ドイツでは以前からインダストリー4.0の具体的な成果を示すものとしてユースケースの調査を推進。それを地図上に配置し、誰でも簡単に参照できるようにした「use cases Industrie 4.0」を展開してきた。2016年の日独連携以降、日本でもこの取り組みを参考とし、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)において、日本におけるIoTのユースケースを募集。2017年3月に正式版の「IoTユースケースマップ」を公開※)し、さらにドイツとの相互リンクなども実現している。
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シェレメト氏は「デジタルマッピングは非常に重要なものだと考えている。インダストリー4.0などで実現されるものが、仮想的なものではなく具体的なものだと分かってもらえるからだ。連携については、まだ始まったばかりのものだが、今までよく知られていなかった事例なども出てきている。2カ国だけでなく国際的な協力の枠組の中でこの取り組みを広げていくことが重要だと考えている。G7やG20の文脈にも入れていきたい」と述べている。
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