出荷前、装置製造工程で、仕様上タクトタイムに入らないという問題も少なくありません。しかし、発覚するのは装置の組立が完了し、制御ソフトウェアのデバッグが進んだ時に分かることがほとんどです。ソフトウェア設計者がこの対応にあたり、さらにソフトウェアの修正にあたります。この修正がうまくいけばよいのですが、全ての案件において100%仕様を満足しているということではないのかもしれません。
さて、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
受注した案件を社内レビューする際に、「そんな構想では要求仕様タクトに入らないよ」という声を聞いたことがあります(前回参照)。
“熟練”ソフトウェア設計者からすればその経験から一目見て分かることだったのかもしれません。しかし、設計担当者としては、他のソフトウェア設計者とも相談して、タイムチャートを作成していました。また課内の主任や課長、部長にも確認してもらった上で、装置仕様を作成し、その仕様に基づき原価見積も行っていました。
原価見積に基づき、営業は見積書を作成して、お客さまには装置仕様と見積書が提示され、何回かのお客さまとの打ち合せも行い、合意に至っています。そして受注された案件でした。
社内での受注案件でのレビューを行った際に、「そんな構想では要求仕様タクトに入らないよ」といわれてしまったとして、再び装置構想に戻ることはできるのでしょうか。
受注時点で、リスクを持った“黄色信号”“赤色信号”の点灯した案件としてスタートすることになります。私自身は過去に、機器選定を見直すことにより対策しました。ただし装置メーカー都合での機器変更の場合でした。
お客さまへの説明を行い、承認を受けますが、その製造コストは装置メーカー負担となるのは言うまでもありません。ソフトウェア設計過程で、バグがあることも事実です。社内に装置がある時点で、バグを発見して修正する必要性があります。
ここで、問題として製造プロセスを挙げていますが、生産品の市場リリースの短縮化の傾向は強まっています。かつては、製造プロセス管理はお客さま主体でしたが、装置メーカーは、材料メーカーと製造プロセス、加工プロセスなどに関わっていかなければならない傾向にあります。
「製造プロセスはお客さま」などと言っていられたのは過去の話になりそうです。また日本以外では、「購入した装置はユーザー(お客さま)が何もしなくても、材料さえそろえれば、その日から使える」という傾向もあります。製品品質同様、タクトタイムにおける製造プロセスについての考慮も必要になりました。いつの日か、装置仕様のタクトタイム欄から、「製造プロセス時間は除く」という文言も消えるのでしょうか。
ただ、そこまで面倒を見ることができれば、装置の付加価値、装置メーカーの付加価値であることに間違いはありません。
装置のフットプリント(footprint:設置面積)を小さくした、あまりにメンテナンス性の良くない装置レイアウトになったということはないでしょうか? クリーンルームはそのクラス別の、単位平方メートル当たりの施工費用や使用する空気、クリーンフィルターの費用など多額の費用が生じるものであって、小さな装置はクリーンルームの占有率を下げることが可能な生産性の高い装置となります。また装置内のユニットの移動量を削減できるなど、タクトタイム向上という装置メーカーにとっても優位性を生みます。
しかし、メンテナンス性や作業者(オペレーター)の安全性を考慮しなかった場合、単にフットプリントを小さくすることには問題が生じることとなります。作業者も身長の高い人、身長の低い人、男性、女性、さまざまです。全ての人にとって、安全かつ作業性の良い装置であることが望まれます。
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