機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は産業機械の不具合発生と品質確保のお話。
前回、フロントローディングから始まり、コンカレントエンジニアリングにつながる話の中で、製品設計工数が増える話をしました。確かに、開発設計期間の中で工数を見れば増える傾向にはありますが、製品を作ってしまった後の不具合対策を考えればその工数は無駄ではありません。
私が勤めている産業機械製造の企業においては、機械には次のような“不具合”があります(以下では「機械」ではなく私が言い慣れている「装置」と表現しています)。
これらはリスクです。また、機械のメカ的な要素だけではなく、電気ハードウェアや機械を動かしているソフトウェアの要素も含まれます。これらのリスクは、社内のデザインレビューによって十分に審査できている“はず”ですが、装置完成後にこれらの“不具合”が発生した場合は、どうなるでしょうか。
私の経験では、このようなことが装置開発設計・製造現場では頻繁に発生します。しかし、これが起これば、その対策のために、設計者・部品調達・加工・組立部門は早急な対応を求められます。部品の簡単な追加工や短納期で購入できるような部品であれば問題は大きくありませんが、部品調達部門が調達に奔走し、組立部門は既に組み立てた装置を分解するような対応を行う場合もあります。
装置出荷日に遅れを生じないために、社内では工数を集中的に投入します。順調に進めばよいのですが、順調に進まなければ、さらに工数を投入しますが、出荷日が遅れることもあります。そうなると、営業がお客さまに説明に行かなければなりません。そんな経験をされた方は、私だけではないでしょう。
当然のことながらお客さまには迷惑ばかりか「生産できない」という損害を与えることになります。装置メーカー側には工数や対策部品などの費用が生じます。私の経験では、現地対策を行う場合は、この対策完了までの期間は長期化します。お客さまに多大な損害を与えることをまずは初めに挙げなければなりませんが、装置メーカー側は、対応工数、加工品・購入品の費用が増えていきます。
私の経験では、納入先はクリーンルームとなることがほとんどでした。クリーンウェアを着て、持ち込むことができるものも制限される場合もあります。このような環境では、既に設置された装置の周辺に、他の装置や機器があり、自由に動き回ることは、社内の組立環境のようには出来ません。
その対策の対応者も限られます。社内のように「寄ってたかって」の検討を行うことは、「現場」で行うことが出来ません。納入先は海外であることも多く、その往復だけでも時間を要することでしょう。このようなことから、装置メーカーに生じる費用は、どんどん膨らんでいきます。結果、赤字の装置になってしまう可能性もあるわけです。
私の経験では、精度不具合が生じた製品が市場に出てしまうということは、お客さまの品質管理体制によって未然に防止されていましたので、そのようなことはありませんでした。
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