デンソーが新たに開発した24GHz帯準ミリ波レーダーが、トヨタ自動車の新型「カムリ」に採用された。マツダの新型「CX-5」も古川AS製の24GHz帯準ミリ波レーダーを採用している。従来は欧州製が多かった市場だが、国内サプライヤーが相次いで参入している。
デンソーは2017年8月10日、トヨタ自動車が同年7月に発売した新型「カムリ」に新開発の24GHz帯準ミリ波レーダーが採用されたと発表した。デンソーは、車両前方を検知する77GHz帯ミリ波レーダーでは採用実績があるが、車両の側方や後側方を検知する24GHz帯準ミリ波レーダーは初採用となる。
新型カムリは、中〜大型車向けの先進運転支援システム(ADAS)「Toyota Safety Sense P」の他、車両後方と関わる3つの安全機能として「ブラインドスポットモニター(BSM)」「インテリジェントクリアランスソナー」「リヤクロストラフィックアラート(RCTA)」がオプション設定となっている。デンソーの24GHz帯準ミリ波レーダーは、BSMとRCTAに用いられており、リアバンパー内に組み込まれている。
BSMは、隣接車線の側方〜後側方を走行する車両をレーダーで検知する。車両がドライバーの死角に入ったときに、ドアミラーに搭載されたLEDインジケーターを点灯させる。その状態でドライバーが車線変更のためにサイドターンランプを点滅させるとLEDインジケーターも点滅し、ドライバーに注意を喚起する。
一方、RCTAは、駐車場から後退する際に、左右後方から接近してくる車両をレーダーで検知する。BSMと同様にドアミラー内のインジケーター点滅とブザーおよびナビ画面の表示によりドライバーに注意を喚起する。また、インテリジェントクリアランスソナーとの連携により、左右後方から接近してくる車両と衝突の危険性がある場合に自動的にブレーキ制御を行う「リヤクロストラフィックオートブレーキ(RCTAB)」も実現している。RCTABはレクサスブランドの「RX」などに搭載されているが、トヨタ車としては初採用となる。
BSMとRCTAでは、24GHz帯準ミリ波レーダーが検知すべき範囲は異なる。BSMは、高速道路をはじめ一定速度以上で走行している際の車線変更時に安全を確保するためのものであり、後側方の中距離以上まで検知できる必要がある。一方、RTCAは、駐車場から後退など低速時に用いるもので、BSMと比べて検知距離よりも検知範囲が重視される。
デンソーの24GHz帯準ミリ波レーダーは、これらの機能を1個のレーダーモジュールで実現するための工夫を施している。具体的には、BSMを用いる車両前進とRCTAを用いる車両後退の運転操作に連動して、移相器と呼ばれる装置を用いて検知の方向や範囲を切り替えられるようにした。また、電波を送受信する回路と移相器回路を、それぞれを1個のICに集積しレーダーモジュールの薄型化を実現したという。
なお、電波を送受信する回路、移相器回路を集積したICの製造には、タワージャズ(TowerJazz)の0.18μmのSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスとCMOSプロセスの組み合わせを用いた。
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