「IoT導入の壁」を乗り越える「IoT導入計画」とは先行事例から見る製造業の「IoT導入の壁」(後編)(2/3 ページ)

» 2017年04月11日 10時00分 公開

IoT活用シナリオのまとめ方

 ところで、実現したいIoT活用を具体的に検討するにはどうすべきだろうか。「IoT導入の壁」のフレームワークに基づくことで、抜け漏れの無い効率的なプロジェクト検討が可能になると考える。この「IoT活用シナリオ」の記載内容を図3に示す。

図3 図3 IoT活用シナリオの記載内容(クリックで拡大) 出典:日立コンサルティング

1.IoT活用の課題と狙い

 IoT活用の前提として、現状の何が課題となっているのか、活用結果として具体的に何ができるようになるのか(狙い)を明確にする。その際、IoT活用ステージを参照し、漠然とした理想では無く自社としての目指すステージがどこにあるのかを、経営層と具体的に意識合わせを行うことが重要となる。また、定量的な経営貢献効果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)もこの段階で明確にしておく。このパートは、シナリオの概要を整理したものといえる。

 ところで、製造業におけるIoT活用の「狙い」には一般的にはどのようなものが考えられるだろうか。ここではご参考までに先行事例などから選定した代表的な12のケースを図4に示しておく。このような最終形を参照しながら議論することも効果的だといえる。

図4 図4 製造業の代表的なIoT活用の狙い(クリックで拡大) 出典:日立コンサルティング

2.ステークホルダと、それぞれの期待と役割分担の整理

 IoT活用の狙いを実現する上で「会社・組織の壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、各関係者(ステークホルダ)の想定される役割分担と想定される期待を明確にする。ここでは、組織間や役割間での相反(コンフリクト)の発生の検証がポイントとなる。

3.分析に必要なデータと分析の内容

 「データ定義・品質の壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、必要なIoTデータが何か、その利用目的・利用場面・利用者、そして分析に必要な管理単位・粒度を明確にする。ここでは、取得したIoTデータが、例えば、どの工程の、どの機械からの、どのような加工データなのか、といった意味付けを行うためのマスタの整備状況の検証がポイントとなる。

 「技術・スキルの壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、分析要件、及び分析に必要なスキル・知識を明確にする。ここでは、スキル・知識が属人化されず共有可能な形式で保有されているかの検証がポイントとなる。

 「運用上の壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、IoTデータの利用場面・利用者や分析要件といった分析の業務イメージを明確にする。ここでは、分析精度を継続的に改善していくたねのPDCAサイクルが可能な体制となっているかの検証がポイントとなる。

4.主要なデータフローの整理

 「システム環境の壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、IoT活用の狙いの実現に必要となるシステム構成要素と必要な要件を明確にする。ここでは、収集、蓄積・分析、活用のそれぞれの段階でのシステムの整備状況の検証がポイントとなる。

 「データ連携の壁」に関わる阻害要因を明らかにするために、IoTデータの収集、蓄積・分析・活用までのデータフローを明確にする。ここでは、データを集約して蓄積・分析する拠点と発生箇所との連携状況や、拠点・企業間を跨ぐ連携状況の検証がポイントとなる。

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