プロトラブズが2017年中の立ち上げをめどとする3Dプリンティングサービスの準備を進めている。「これまで提供してきた射出成型/切削加工の受託製造で約2300社の顧客から支持されてきた品質を、3Dプリンティングサービスでも圧倒的な形で確保する」(プロトラブズ社長のトーマス・パン氏)という。
試作・小ロット部品の受託製造を行うプロトラブズは、2016年8月に移転した新拠点(神奈川県座間市)を中核に事業展開を拡大している。同年10月から、2種類の異なる樹脂を一体で成形できる2色成形(ダブルモールティング)のサービスを開始。金属加工についても、最も需要の多いステンレス鋼(SUS304およびS316)に加えて、2017年2月から鋼鉄材(SS400)に対応した。また、国内でのサービスが先行していたインサート成形は、米国や欧州を含めたグローバル対応となった。
射出成形や切削加工のイメージが強いプロトラブズだが、試作開発の有力な手法である3Dプリンタへの対応も進めている。プロトラブズ社長のトーマス・パン氏は「2017年中をめどに、3Dプリンティング技術を用いたサービスの立ち上げを鋭意検討している」と語る。
しかし、試作開発において、3Dプリンタを利用するのと、プロトラブズのような受託製造企業に依頼するのは目的が少し異なる。3Dプリンタの特徴はやはりスピードになるだろう。設計現場に設置して、設計データの妥当性を実際に“モノ”として確認できることは大きな利点になる。これに対して受託製造は、精度の高さが特徴になる。製品開発がある程度進捗した段階では、部品の勘合チェックなどを行うことになる。このときには、さまざまな材料への対応と、寸法や品質の確保が求められるからこそ、受託製造を利用するわけだ。「3Dプリンタはどうしても簡易的なモノを作るイメージが強く、『見る』だけに使うことが多い。3Dプリンタをかつてのドットマトリックスプリンタとすれば、受託製造は商業印刷といった位置付けになるだろう」(パン氏)という。
それでは、受託製造を中核とするプロトラブズではどのような3Dプリンティングサービスを検討しているのだろうか。パン氏は「3Dプリンタでも、約2300社の顧客から支持されてきた品質を圧倒的な形で確保する。その上で、当社の受託製造の特徴でもあるオンデマンド発注プロセスはそのまま利用できるようにしたい」と意気込む。
製造業の開発部門では3Dプリンタを導入して自社内の試作開発に利用していることも多い。「たとえ大手企業であっても、自社の3Dプリンティングビューローでは開発ピーク時にキャパシティーの問題が出てくる。また3Dプリンタ利用のノウハウについても、自社の製品に関わる分野でしか蓄積できない。当社に任せてもらえれば開発ピークの問題を解決できるし、さまざまな業種の顧客がいるので幅広い要求に応えていけるだろう」(パン氏)としている。
導入する3Dプリンタについては、方式は光造形と金属粉末(メタルパウダー)で、複数の機種を採用することになりそうだ。パン氏は「米国では2016年10月、ノースカロライナに80台もの3Dプリンタをそろえるとともに200人のスタッフが所属する施設を開設した。欧州では企業買収により2015年から3Dプリンティングサービスを展開している。これらのノウハウを基に、日本でのサービス展開を立ち上げていきたい」と述べる。なお、米国ではHPの3Dプリンタ「Jet Fusion 3D」を運用しており、日本での導入も検討しているとのことだった。
また、新拠点で進めていた、ISO9001(品質)、ISO14001(環境)、ISO27001(情報セキュリティ)という3つの国際標準規格の認証取得を2017年3月1日に発表している。「顧客の皆さまにさらに安心して当社のサービスを利用していただけるだろう」(パン氏)としている。
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