HILSにプラントモデルを組み込むいまさら聞けないHILS入門(8)(2/3 ページ)

» 2017年03月15日 11時00分 公開
[高尾英次郎MONOist]

アクチュエータインタフェース

 表2にアクチュエータインタフェースのHILS外部から入力されるHILS側から入力される電気信号、HILS内部に出力されるデジタル値を示します。

アクチュエータ HILS端子への信号入力 HILSモデルへの電気的出力 試験装置
インジェクター ECUインジェクションパルス(エンジン回転角度ベース0〜5V信号) 噴射開始タイミング(度BTDC)、噴射期間(度) インジェクターパルス発生装置
イグナイター・イグニッションプラグ ECUイグニッションパルス(エンジン回転角度ベース信号) イグニッションタイミング(度BTDC) イグニッションパルス発生装置
スロットルバルブ ECUスロットルモーター駆動パルス(時系列0〜5V信号、連載第4回の図6参照) 駆動パルス電流方向、周期・デューティー比 スロットルパルス発生装置
パイロットランプ 12V/0V オン/オフ(1/0) 定電圧電源
燃料ポンプ 0V/12V オン/オフ(1/0) 定電圧電源
表2 HILSアクチュエータインタフェースの確認方法

 ECUは、インジェクターパルスやイグニッションパルスをエンジン回転角ベースで上死点を基準として出力します。このパルスを読み取るためには、パルス信号だけでなく、基準となる上死点タイミングと回転数の情報が必要です。そこで、テスト用のパルスジェネレーターには図2のような仕組みが必要となります。

 図2(a)は、外部のパルス発生装置によるテスト方法です。ECUにテスト信号を発生する機能が備わっている場合は、利用することが可能です。図2(b)は、HILSのパルス発生回路を利用するテスト方法です。発生するテストパルスは、どちらの方法でも、エンジンの回転パルスと上死点パルスに対応する図2(c)の③のパルスとなります。

 イグニッションパルスの入力インタフェースもパルス幅が極短時間で、パルスオン時間測定の必要がない以外は、インジェクションパルスと同様です。

図2 図2 インジェクター駆動パルスインタフェースのテスト(クリックで拡大)

 スロットルバルブ駆動パルスは、連載第4回「HILSとアクチュエータ」の「図6 モーター制御用Hブリッジ回路」で説明したモーター駆動電流によってテストし、駆動パルスの電流方向、パルス周期およびデューティー比を読み取ります。

プラントモデル動作の確認

 前回までに考えてきたエンジン・発電機プラントモデルに関するサブシステムを表3に示します。これらのサブシステムの動作確認を行います。サブシステムごとに仮の入出力を接続して、それぞれの機能を検証します。

 全体を一気に組み立てて動かすと、異常が生じても(何らかの異常が発生するのが普通です)、どこに問題があるのかを探ることが困難です。また、サブシステムモデル間でやりとりする信号は、同じ物理量、同じ単位、同じ時間スケールで一致していなければなりません。不完全な場合には、この段階で発見して修正する必要があります。

プラントモデル 電気的入力 信号出力
エンジン インジェクター 回転数(rpm)、インジェクターソレノイド駆動パルス、オン期間(度)、オンタイミング(度BTDC) 噴射量(mg/cycle・cyl)
スロットルシステム スロットルモーター駆動パルス、電流方向、デューティー比 モーター回転数、スロットル位置
トルク発生機能ブロック 回転数(rpm)、噴射量、噴射開始タイミング、イグニッションタイミング、スロットルバルブ開度 トルク(Nm)
発電機 回転数、出力電力 電圧、負荷トルク
電気負荷 電圧、抵抗 消費電力
エンジン・発電機回転部分 回転数、エンジントルク、発電機負荷トルク 回転数(サンプル時間後の変化)
表3 プラントモデルサブシステム作動確認項目

 サブシステムの機能は、実機で行う統計モデル用データ作成のための実験と、同様の実験をHILS上で行うことにより、確認することができます。これまでの繰り返しになるかもしれませんが、個々のサブシステムについてHILS上で行う実験を考えましょう。

 プラントモデルの機能を検証する場合、モデルの入力を一定に保つと一定の出力が得られる場合が大半です。ここで、入力状態を段階的に変化させて出力を測定することにより、モデルの特性を把握検証することができます。

 表3のサブモデルの内、

  1. インジェクター
  2. スロットルシステム
  3. エンジントルク発生モデル
  4. 発電機モデル

はこの試験で検証できます。

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