ミマキエンジニアリングがUV硬化インクジェット方式3Dプリンタ「3DUJ-P(仮)」を2017年内に発売する。広告や看板などに用いられる2Dの産業用プリンタで培った技術を基に、3Dプリンタでありながら1000万色以上のフルカラー造形を実現した。本体価格は1500万〜2000万円を想定している。
ミマキエンジニアリングは2017年3月7日、東京都内で会見を開き、UV硬化インクジェット方式3Dプリンタ「3DUJ-P(仮)」を発表した。広告や看板などに用いられる2Dの産業用プリンタで培った技術を基に、3Dプリンタでありながら1000万色以上のフルカラー造形を実現した。発売は2017年内を目標としており、本体価格は1500万〜2000万円を想定。材料となるUV硬化インクの価格は、CMYKと白色、光を透過するクリアカラーなどは1l(リットル)当たり3万5000円。水溶性のサポート材は1l当たり2万5000円となっている。
同社は2015年5月に3Dプリンタ事業への参入を発表。同年9月から、3DUJ-Pの技術を用いたフルカラー造形出力サービスを、子会社のグラフィッククリエーション(GCC)を通して行ってきた。フルカラー造形に対応する3Dプリンタそのものの市場投入も表明していたが、時期は未定だった。今回の発表により2017年内の発売が決まったことになる。
3DUJ-Pは、出力したい3Dモデルデータをスライスし、スライスされた平面データを1層1層プリントすることで造形を行う。対応する3DモデルデータのフォーマットはSTL、OBJ、VRML、PLY、3MF。
フルカラー造形を実現する材料には、2Dの産業用プリンタで実績のあるUV硬化インクを用いる。UV硬化インクをプリントヘッドから吐出してUVランプで硬化した後、ローラーで表面をならして再度UVランプで硬化するというプロセスを1層分として、これを積み上げていくことで立体造形を行う。
1000万色以上とするフルカラー表現は、CMYKと白色、クリアカラーによって実現する。サポート材はUV硬化インクとともにプリントヘッドから吐出するので複雑な立体造形の表現が可能になる。さらにサポート材は水溶性なので、数時間水に漬けるだけで除去できるという。
3DUJ-Pの色表現は、日本の印刷色の標準であるJapan Colorに対して89%の色域を実現している。ミマキエンジニアリング 技術本部 本部長の武内彬氏は「カラー3Dプリントで一般的な石こう方式では難しい色表現ができている」と語る。またクリアカラーを使うことで、ランプシェードなどの光源を用いた製品への応用も可能になる。
造形の精度については開発中ではあるものの、層厚で10μ〜50μmとしている。会見で披露した熊本城のミニチュアを例に「太さが1mmの欄干をきちんと出力できている」(武内氏)という。
材料のUV硬化インクはアクリル系樹脂であり、3Dプリンタで広く利用されているABSと同程度の強度を確保した。また造形物は、含浸剤などを使わずに、そのまま研磨して仕上げることができる。ネジ穴を空けて固定したり、屋外で使用する場合に問題になる紫外線や風雨といった対候性のためにオーバーコートしたりすることも可能だ。
石こう方式では、水に触れることで造形が崩れるなどの問題があるが、3DUJ-Pの造形物は水に触れても変色せず、崩れ落ちることもない。
3DUJ-Pは、UVの光源にLEDを用いているため、1万時間の長寿命を確保しており、熱による造形物への影響もない。ランプ光源で必要になる点灯のスタートアップ時間もないという。プリントヘッドはヘッド内の循環機構により、インクが詰まりにくく、常に最適な状態でインクを吐出できる。
出力速度は、200×85×40mmの造形物を5つ面付きでプリントする場合で10時間。1つの造形物につき2時間としている。これが標準モードの出力速度だが、高精細モードや高速モードなども用意する予定だ。
フルカラーの3Dプリンタは、石こう方式以外にも、ストラタシスや3Dシステムズが樹脂系の材料を使用する製品を販売している。これら競合製品との比較については「印刷業界で積み重ねてきた技術を生かした色表現は3DUJ-Pに優位性があるだろう」(武内氏)としている。
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