経営危機の東芝は、2016年度第3四半期の業績見通しと、大幅な減損で債務超過の原因となっている原子力事業の対応策について発表。生き残り策として「20%未満」としてきたメモリ事業会社の株式売却を「マジョリティーにこだわらない」とし、100%売却もあり得るという方向性を示した。
東芝は2017年2月14日、2017年3月期(2016年度)第3四半期の業績見通しと、大幅な減損で債務超過の原因となった原子力事業の対応策について発表した。
本来、東芝は2017年2月14日に2016年度第3四半期決算を予定していたが、同社の原子力発電(原発)関連のグループ会社であるウェスチングハウス(WEC)において、内部統制の不備を示唆する内部通報があり、その調査のために第3四半期決算を完了させることができない事態に陥った。そのため同日の業績見込みについては監査を終えていない見込みとしての数値発表となる※)。
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そもそも東芝では、WECを通じて2016年1月に買収した、原発の建設やサービスを手掛ける米国CB&I ストーン&ウェブスター(S&W)において、大幅なのれん代の減損が2016年12月に発覚。損失額によっては債務超過に陥ることが明らかになっており、対策に注目が集まっていたところだった。
2017年2月14日に発表されたのれん減損による損失額の“見込み値”は、営業損益ベースで7125億円となった。これによる2016年度第3四半期の営業損益見通しは5447億円の損失、純損益についても4999億円の損失となっている。この結果、2016年12月末時点で株主資本が1912億円のマイナスとなり、実質的に債務超過に陥っていることが明らかになった。
2016年度通期で見ても同様である。営業損益は4100億円の損失となり、純損益も3900億円の損失。株主資本についても1500億円のマイナスで、資本対策なしには債務超過の状態は解消できない見込みだ。
諸悪の根源となった原発事業については、社長直轄組織として「原子力事業統括部」を設置。さらに「原子力事業監視強化委員会」を新設し、東芝 代表執行役社長の綱川智氏を委員長としコーポレート執行役がリスク評価とモニタリングを実施する体制を作る。
原発事業で大きな減損を出した理由として綱川氏はS&W買収について3つの誤算を挙げる。「買収時に認識されていなかったコスト見積もりの必要性が判明した点や、年度をまたいだ運転資本の調整、建設コストにおける効率化ができなかった点の3つが大きかった」と綱川氏は述べる。
経営責任については「原発事業の状況に加えて今回、決算発表ができなかった責任に対しては重く責任を受け止めている。進退については指名委員会にゆだねている」と綱川氏は語る。
こうした原発事業のしわ寄せを食ったのが、東芝の中で唯一大きな利益を稼ぎ出しているメモリ事業である。
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