自動運転車が状況判断するために“マネジャー”をつける――。民生機器テクノロジーの展示会「CES 2017」の基調講演に、日産自動車 会長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏が登壇。ゼロエミッションとゼロフェイタリティ(交通事故による死傷者数ゼロ)に向けた取り組みの成果を語った。
自動運転車が状況判断するために“マネジャー”をつける――。民生機器テクノロジーの展示会「CES 2017」(2017年1月5〜8日、米国ネバダ州ラスベガス)の基調講演に、日産自動車 会長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏が登壇。
ゼロエミッションとゼロフェイタリティ(交通事故による死傷者数ゼロ)に向けた取り組みの成果を語った。
ゼロエミッションとゼロフェイタリティの実現に向けて、日産自動車は3つの領域に取り組んでいる。1つ目が、より安全で意のままのドライビングを可能にする「インテリジェント ドライビング」。2つ目は運転の楽しさを犠牲にせず、クリーンで効率も良いパワートレインを展開する「インテリジェント パワー」。3つ目は、社会と広くコネクトすることで可能性を広げる「インテリジェント インテグレーション」だ。
インテリジェント インテグレーションについては、2015年1月にパートナーシップを締結したNASA(アメリカ航空宇宙局)との開発の成果を明らかにした。NASAが培ってきたロボットの監視技術「VERVE技術」を自動運転車向けに展開した「シームレス オートノマス モビリティ」というシステムだ。
自動運転車が状況判断するのが難しい場面で、遠隔地の指令センターにいる人間のオペレーター「モビリティ マネジャー」が正しい運転計画を教える。例えば、市街地を走行中の自動運転車が事故現場に遭遇したとする。状況によっては、センターラインをまたぎ、信号機ではなく警察官の誘導に従って通行しなければならない。こうした場面であっても、「センターラインを踏み越える」「信号を無視する」とシステムが判断するのは難しい。
この時、シームレス オートノマス モビリティのシステムでは、自動運転車は安全に停止、指令センターに指示を仰がせる。モビリティ マネジャーはセンターラインや信号ではなく警察官の誘導に従うよう自動運転車に教える。
自動運転車が判断に困った事例と対処法についてはクラウド上に蓄積して、同じ地域を走行中の自動運転車と情報共有できるようにする。情報の蓄積が増え、自動運転技術が向上することにより、モビリティ マネジャーはより広い地域、より多くの台数を管理できるようになる。
シームレス オートノマス モビリティの管理対象は、乗用車に限らない。ビジネスで使用する企業にも有益だとしている。自動運転車がタクシーなのか、シャトル運行するのか、輸送車なのかによって、必要な人数のモビリティ マネジャーを割り当てる。
NASA エイムズ研究センター ディレクターのEugene Tu氏は「宇宙技術を異業種に移転するだけでなく、自動車向けの研究成果を惑星探査に応用することもできるだろう」と述べている。
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