そもそもの円高に対する考え方について「グローバル展開を行う日本企業にとっての円高は、日本のコストと原価がグローバルで相対的に見た時に高くなるという現象である」と伊地知氏は定義する。
そのためとり得る施策としては「原価を下げてグローバルで戦う体制を作るということが必要になる。しかし、そのためには時間が必要で、すぐには結果は出せない」と伊地知氏は述べる。今回の決算での原価低減についても、仕入先と共同でどういうコストが下げられるか話し合い、新たな運営体制を作りこみ、実行していくことができたために原価が下げられたという背景がある。これは企業体としての継続的な力にはつながるが、一朝一夕でできることではない。
そこで、その原価低減を実現するまでの間、どういう対策をするのかというのが重要になる。「ここが営業の出番である」と伊地知氏は述べる。
「即効性のある円高対策としてとり得る策の1つ目は、コストと原価の影響が受けないビジネスを大きくするということがある。具体的には国内の販売を伸ばすことである」と伊地知氏は語る。2つ目は、利益率の高い製品を売るということである。「製品ミックスを高めるというように表現しているが、より利益率の高い製品を中心に販売戦略を立てることで利益率を改善することができる」(伊地知氏)。そして3つ目が、車両価格の引き上げである。
「これらの3つの即効性のある取り組みを行いつつ、原価低減の結果が出るのを待つという2段階の取り組みがトヨタが行ってきた円高への対策である」と伊地知氏は述べる。
円高対策といえばすぐに工場の海外移転という話なども出るが「当然海外生産なども検討はするが、すぐに移転させるというのは生産品質面なども含めて無理だ。まずは現地調達品を拡大するというような取り組みを進めて原価低減を図り、その上で可能であれば現地生産に踏み切るというような順番になる」と伊地知氏は海外移転についての考えも述べる。
例えば、日本で販売していない「レクサスES」は日本での生産を米国のケンタッキー州に移したが「検討を開始したのは前回の超円高の時期。実際の生産は2016年に開始した。それくらい時間が必要なことである」と伊地知氏は述べている。
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