セゾン情報システムズは、IoT(モノのインターネット)向けのデータ連携ミドルウェア「HULFT IoT」を発表した。業務システム向けのファイル転送ミドルウェア「HULFT」をベースに、機器監視や位置追跡、防犯・モニタリング、決済、利用料測定などの「ミッションクリティカル領域」で用いられるIoTのデータ転送に最適化したことを特徴とする。
セゾン情報システムズは2016年9月9日、東京都内で会見を開き、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)向けのデータ連携ミドルウェア「HULFT IoT」を発表した。業務システムに用いられるメインフレームや各種サーバ、クラウドなどをつなぐファイル転送ミドルウェア「HULFT」をベースに、機器監視や位置追跡、防犯・モニタリング、決済、利用料測定などの「ミッションクリティカル領域」で用いられるIoTのデータ転送に最適化したことを特徴とする。同年9月16日にHULFT製品のパートナー経由で販売を開始する。税別の標準価格は、接続するIoTデバイスの数が100個単位で、月額10万円から。初年度販売目標は300社となっている。
同社常務取締役 CTOの小野和俊氏は「IoTのデータ転送に用いる通信プロトコルにはHTTPSやMQTTがある。しかしこれらは、重要度や秘匿性が高く、転送するデータの欠落が許容されないミッションクリティカル領域に適しているとは言い難く、さまざまなカスタム開発が必要だった。今回発表するHULFT IoTは、金融機関などで広く利用されるなど高い信頼性を持つHULFTの特徴をそのままに、IoTのデータ転送に求められる仕様に最適化しており、HTTPSやMQTTのようなカスタム開発も不要だ。スモールスタートが可能な価格設定もIoTに適している」と語る。
HULFT IoTがターゲット市場とするのが製造業である。具体的には、工場の生産効率化で求められる製造装置やFA機器の装置ログの収集や、IoTシステムのエッジデバイスの役割を果たすIoTゲートウェイとサーバ/クラウド間でのセンサーデータ収集などになる。また、製造業以外も対象になり得る用途として、カメラによる映像/画像データの収集も挙げている。
HULFT IoTでは、データを集約するサーバ/クラウド側に組み込んだ「HULFT IoT Manager」と、エッジデバイス側に組み込んだ「HULFT IoT Agent」の間で、HULFT IoTプロトコルを基にしたデータ連携を行う。エッジデバイスの要件は「IPアドレスを持つこと」「Linux/WindowsなどのOS上で動作する」「データがファイルになっている」ことだ。エッジデバイスに組み込むHULFT IoT Agentのデータ容量も2M〜3Mバイトあるので、動作デバイスは市販のIoTゲートウェイ以上の性能を持つ必要がある。
HULFT IoTの構成イメージは2つある。1つは、製造装置や車載システム、カメラといった一定レベル以上の性能を有する機器を用いる場合である。この場合は、HULFT IoT Agentを機器そのものに組み込むことになる。もう1つは、数多くのセンサーデバイスからBluetooth Low Energyなどを介した通信でデータを収集するIoTシステムだ。こちらの場合は、センサーモジュールではなく、各センサーからのデータを一旦集約するIoTゲートウェイにHULFT IoT Agentを組み込む。
HULFT IoTは、信頼性に加えて、データの圧縮転送によるコスト低減も大きな特徴になる。小野氏は「IoTから得られるデータの容量は大きい。これをHTTPSはテキストで、MQTTではメッセージで送信している。圧縮していないので、3GやLTEのネットワークを使っている場合には通信コストが膨大になる。圧縮転送できるHULFT IoTであれば、その分だけ通信コストを削減できる」と説明する。
HULFT IoTは2016年4月から、一部顧客による実証実験を行っている。そのうちの1社であるグローバルの工作機械メーカーは、装置ユーザー向けのメンテナンスのため、装置にSIMカードを用いた通信機能を組み込むことによる装置ログの収集を検討していた。しかし、取得するデータの容量が膨大になり、通信コストがかさむことが課題になっていた。HULFT IoTを用いた実証実験では、データの転送容量を約10Gバイトから約0.5Gバイトまで圧縮することができた。さらに、HULFTの特徴である、送達保証やエラー検知/自動リトライによって、欠損のないデータ取得も実現したという。
HULFT IoTの価格は、平日9時半〜17時にサポートを行う「通常サポート」で月額10万円、24時間/365日サポートする「24時間サポート」で月額20万円。エッジデバイスに組み込むHULFT IoT Agentの数は100単位で、利用期間は1カ月単位となっている。「年間契約が前提のHULFTに比べて、1カ月単位で試せるので、IoT活用を検討している製造業にとって利用しやすい価格体系になっている」(小野氏)。
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