客先でCAE導入を支援する解析エンジニアのつぶやき。今回は、CAEの計算時間がかかりすぎる時、どういう工夫をしたらよいかを考えてみる。
本記事は、CADを快適な環境で使ってもらうソリューション専門街「CADJapan.com」から転載しています。
せっかくCAEを導入しても、「時間がかかるために上手く評価ができない」「何から取り掛かっていいか分からない」などのご相談をよくお客さまから受けます。CAEは前もって計画を立てずに計算すると、ほとんどの場合は計算量が増え、時間がかかりすぎてしまいます。
しかし、ちょっとした工夫をし、問題をブレイクダウン(簡素化)することで、計算を簡単に早く行うことができます。例えば、解析結果に影響のないフィーチャーは、抑制して解析から除外することや、モデルを部分的に取り出して解析することなどが挙げられます。その中でも、非常に簡単な発想で効果を出した例を1つご紹介します。
ある電子機器のメカ設計をされているお客さまで、流体解析を使用してファンによる強制対流の冷却効果を検討していました。初めはネジやハーネスを除く、ほぼ全ての形状を盛り込んだまま計算を試みました。部品点数が多いため、材質の設定や発熱量の計算を行うだけで、かなり時間がかかってしまいました。ようやく計算を開始できても、10時間たっても解析は5%程しか進みません。
結局、「メモリが足りません」のメッセージでそのモデルでの解析は諦めました。これではいけないと対策案を考えた結果、モデルを少し簡略化して問題をブレイクダウンしてみることにしました。
そこで以下のルールを決め、あらためて解析を行いました。
最終的に解析の条件設定は1回目の約3分の1の時間で、また途中で諦めてしまった計算も、1時間弱で完了することができました。肝心の解析結果には実測の±15%程度の開きがありました。しかし、FANの位置や開口部の位置を少しずつ変えながら多くのケースを比較することで、最適な結果となる配置を導き出しました。また、別のモデルにおいても一定のルールで簡略化することにより、一定の基準で優劣を判断することができました。現在では、簡略化のルールを標準化し、ドキュメントを水平展開しています。
このケースは、時間をかけて99%の結果を出すより、短時間で85%の結果を出し、その分多くの比較をすることで、最適解にたどり着くことができた1例です。詳細解析よりも相対比較解析で効果を出すことが成功への第一歩です。
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