Intelに買収されたFPGA大手のAlteraだが、これはIntelの事業領域変化に起因すると考えられる。同社幹部は「好循環といえる状態だ」と現状を高く評価する。
FPGA大手AlteraはIntelによる買収により同社の一部門となり、現在はIntelの「プログラマブル・ソリューション・グループ」(PSG)としてFPGA事業を展開している。既にXeonにFPGAを統合した製品の開発が発表されるなど、買収効果の一端が垣間見えるが、来日した同社幹部は「FPGAはIntelの成長に大きな役割を担う」と自信を見せる。
来日したVince Hu氏はAlteraにてプロダクト&コーポレート・マーケティング担当Vice Presidentを務めていたが、買収に伴い、現在はPSGのVice Presidentを務めている。2015年12月の買収から現在までHu氏は多くの顧客の元を訪れたが、買収に対しての反応は好意的なものだったと語る。
好意的な反応の背景には「CPUメーカー」からの脱皮を図るIntelの変化がある。ある調査では2020年にコネクティッドデバイスは500億を超えるといわれており、デバイス数の増加はもちろん、加えて増大するデータの処理とネットワーク負荷への対策も大きな問題として浮上している。コンピューティングの在り方が変化しようとしているなか、その対応策の1つとしてIntelはFPGAに大きく注目している。
「IntelはPC向けCPUに強みを持つベンダーだが、現在はクラウド、FPGA、コネクティッドデバイスなどに軸足を移している。浮上する諸問題への対応策として、Intelのプロセッサやメモリ技術への期待は高まっている。そのなかでFPGAは高い性能と柔軟性、省電力性といった特長からさまざまな市場で既に利用されており、その重要性は明らかだ」(Hu氏)
FPGA事業について基本的にはこれまでAlteraの行ってきた方針を踏襲するが、買収による変化もある。端的な変化はブランドで、「Stratix」「Arria」「Cyclone」「Max」といった各製品ブランドは継承されるが、2016年第三四半期に出荷を予定するハイエンド製品「Stratix 10」の登場を境にトータルとしてのブランドは「Altera」ではなく「Intel FPGA」を前面に押し出した展開となる予定だ。
Stratix 10の次世代である「第10世代」に相当する製品のロードマップも更新された。ハイエンドのStratix、ミドルレンジのArria、ローエンドのCycloneという3セグメント展開に変わりは無いが、次期製品の開発コード名は「Falcon Mesa(HE)」「Falcon Mesa(MR)」「Harrisville」と改称され、ミドルレンジ製品にもIntel 10nmプロセス技術が採用されることとなった。
第10世代製品のスケジュールと内容に大きな変更はないとHu氏が述べるよう、変更点としてはコード名の変更と、ミドルレンジへの10nmプロセス技術採用(以前の計画では14nmプロセス技術の採用とされていた)の2つといえる。「既存製品計画のキャンセルではない。スコープと名称が変更されたが、内容的に変更はない」(Hu氏)という発言からもそれは明らかだ。
むしろ注目されるべきは「研究開発費も増やし、数百人規模でエンジニアも増員している」(Hu氏)というIntelの積極的な投資だ。早ければ2016年第三四半期に第1弾が登場するCPU/FPGAの統合製品はその効果の一端といえるが、Hu氏は将来的な構想として「FPGAとCPUをシームレスに開発できるような方向性を目指している」と語っている。
この「シームレスな開発」についてHu氏は「近い将来の話ではなく、詳細はまだ話せない」と慎重な姿勢を見せるが、ハードウェア仮想化をCPUやFPGAといったチップレベルまで浸透させるものともいえ、同社の取り組みは注目に値する。
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