ホンダが2016年4月に先進安全技術の開発のために新設した「栃木プルービンググラウンドさくら」。真新しいテストコースでホンダセンシングの実力を試した筆者のレポートをお送りする。
2016年7月13日。JR宇都宮駅から北の方向へ、ホンダが手配した大型バスに乗って1時間弱移動した後、のどかな農村の一角にたどり着いた。コンクリート塀の入り口には看板がない。小高い丘を上がっていくと、周囲に太陽光パネルがずらりと並び、その奥手に真新しいテストコースが出現した。
ここは、ホンダが先進安全技術の開発を行うため、2016年4月に開設した「栃木プルービンググラウンドさくら」(栃木県さくら市)だ。俗称は、インフォメーション・テクノロジーに関する技術が主役だとして「ITコース」という。今回、ITコースで日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)の会員を対象とした、先進安全技術「ホンダセンシング」のワークショップが行われた。
施設全体の広さは21.5ヘクタールで、東京ドーム4.5個分に相当する。そのコースレイアウトを紹介しよう。直線路は目測で約200m、400m、800mのコースが並列に配置されており、衝突軽減ブレーキなどの危険回避支援システムの評価エリアとなっている。その奥にある市街地模擬コースでは、交差点などのリアルワールドを再現し、駐車支援機能や標識認識機能の評価を実施する。また、模擬交差点の先には定常円コースがあり、渋滞運転支援機能の評価を行っているという。
ホンダはこれまで、先進安全技術の開発には宇都宮市郊外にある栃木研究所内のテストコースを使用していた。しかし「手狭になったので、ホンダが以前から所有していたこの土地にテストコースを新設することを決めた」(ホンダ関係者)という。
なお、同コースが報道陣に公開されるのは今回が初めて。参加者による撮影は、プレゼンテーションが行われたテント内に限定されており、コース内での走行風景はホンダのオフィシャルカメラマンのみが撮影した。
午前10時半過ぎから始まったプレゼンテーションは、ホンダ 執行役員兼本田技術研究所 取締役 専務執行役員 四輪R&Dセンター長の三部敏宏氏が登壇した。ホンダは環境と安全のビジョンとして「自由な移動の喜び」と「豊かで持続可能な社会」の実現を目標とする。交通事故死亡者数が下げ止まりつつある日本の交通事故の発生状況をグラフで提示し、「Safety for Everyone」を目指すと宣言した。
Safety for Everyoneの実現にむけては、「ヒト」「コミュニケーション」そして「テクノロジー」の三本の矢を考慮しているという。「ヒト」については、古くは1960年代から安全運転の啓発活動を開始しており、1970年には安全運転普及本部を設置。さらに、幼児から高齢者まで交通安全教育を実施している。
次に「コミュニケーション」についてはネットワーク通信による情報の提供と共有を行っている。埼玉県内の急ブレーキ多発地点や交通事故多発地点、さらに危険スポット投稿情報などを掲載した「セーフティマップ」を制作しており、同県の交通安全対策として利活用されている。
そして、第三の柱が、リアルワールドでの事故の実態に即した研究開発を行う、テクノロジー=安全技術である。
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