新しい仕事をとろうとPCで「へたくそなチラシ」(丈彦氏)を自作し、あちらこちらにポスティングして回ったこともあるそうだ。
「何の反応も得られませんでした」と吉田社長はいう。
それでも「できることは何でもやろう!」とWebサイトを作り、中小企業家同友会に入って異業種交流会にも参加し勉強を始めた。いろいろな業種の経営者と知り合う中で得たことは大きかった。
同友会に入って3〜4年したころ、会員企業からオフィスの改装工事の依頼があった。「社内に広いカフェ空間と、社員がゆっくり休める和室を作ってほしい」(丈彦氏)というオーダーだった。
最初は、「社内にそんなスペースが必要なのか?」と疑問に思った吉田社長だが、打ち合わせを重ねる中で、「社員には、休憩時間にPC机で昼食をとるのではなく、ゆったりできるスペースで過ごしリフレッシュしてもらいたい。そうすれば仕事の効率も上がるだろう」というコンセプトに共感した。
オフィスの中にカフェ空間を設けると、会話やディスカッションの機会が増える。社外からも人が集まり、新しいアイデアや仕事が生まれる。実際に完成したオフィスの活用方法と効果を見た丈彦氏は、自社を「創造する空間〜クリエイティブワークスペース」のモデルルームにすることを決意した。
「実は、前年度に赤字を出し、これからどうなるのか分からない……」(丈彦氏)と追い詰められている時期だったそうだ。同氏は「会社を経営してきた中で、一番、苦しい時だった」と当時を振り返る。
そんなときに、自社の家屋をリニューアルしても1円にもならない。けれど、次の受注につなげるためには、いいものを作らなければならない。焦りと不安にとりつかれ、余裕をなくし、棟梁たちにも厳しい要求をしてしまったそうだ。
棟梁たちの頑張りで完成した新社屋は、経営者仲間から「いいね!」と言われ、幾つかの受注につながった。厳しい状況ではあるものの、「やってよかった! これが看板商品となり苦境を抜け出せる……」というほど、ビジネスは甘くなかった。
「あのときの受注は、ご祝儀的な意味があったと思います」と丈彦氏は経営者仲間に感謝している。しかし、いつまでも好意に甘えるわけにもいかない。経営を立て直すために、マネジメントやプレゼンの方法、営業のやり方などの勉強をコツコツと継続した。
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