日立製作所は、北海道大学と共同で、2つの新たな高精度陽子線治療の臨床適用を本格的に開始したと発表した。両者が開発した動体追跡照射技術とスポットスキャニング技術を適用した陽子線治療システムを用いる。
日立製作所は2016年5月20日、北海道大学と共同で、2つの新たな高精度陽子線治療「治療室コーンビームCT」「強度変調陽子線治療IMPT(Intensity Modulated Proton Therapy)」の臨床適用を本格的に開始したと発表した。
両者は、呼吸などで位置が変動する肺や肝臓などの体幹部の腫瘍を治療するため、腫瘍位置をリアルタイムで捉えて陽子線を照射する動体追跡照射技術と、スポットスキャニング技術を適用した陽子線治療システムを2014年に開発している。今回、これらの技術を適用した北海道大学病院の陽子線治療システムにおいて、新たに2つの高精度陽子線治療の臨床適用を開始した。
その1つである治療室コーンビームCTは、回転ガントリーを搭載し、治療直前に患者の体内の状態を3次元で正確に撮像できる。これにより、従来に比べて陽子線の照射位置精度を高めることができるという。2015年3月に医療機器の製造販売承認を得て、同年10月に臨床適用を開始している。現在までに、20人の患者に対してこれを用いた治療を実施しており、今後も継続して臨床使用する予定だ。
また、強度変調陽子線治療IMPTは、複数方向から照射する陽子線の強度分布を自在にコントロールすることで、病巣の形が複雑な場合や、正常組織が隣接している場合にも線量を病巣に集中し、正常組織への線量を低減できる。スポットスキャニング陽子線治療の1種で、飛程誤差やセットアップ誤差に対しても強い線量分布を作る技術(ロバスト最適化技術)を組み合わせ、線量集中性を高く保ちつつ、動きにも強い分布形成を可能にした。
2015年8月にIMPTの本格的臨床適用を開始し、現在までに前立腺、肝臓、頭頸部、小児治療に対して適用されている。今後、学会のガイドラインと統一治療方針に沿った上で、さらに適応部位を拡大する予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.