セイコーインスツルでは、スーパーコンピュータ(スパコン)とOpenFOAMを使って、インクジェットヘッドの3次元解析をしている。実はスパコンを使う前は、社内でなかなかCAEの有効性が理解されなかったという。そんな中、スパコンに取り組むことになった経緯や、解析事例について話を聞いた。
セイコーインスツル(SII)は時計をはじめ、電子デバイスや情報システム機器、計測分析機器などを製造している。メトロノームや放射線検出器、NFC決済システム、レシート印字などに使われるサーマルプリンタといった製品も手掛けている。
現在SIIで、主力の時計に次いで力を入れているのが、産業向けインクジェットプリント用ヘッドだという(図1)。
その用途は、屋外に設置されるような看板や車両ラッピングのような大型のものから、少量多品種のパッケージ印刷まで幅広い。アパレル業界では捺染にも採用されている(図2)。
型を用意する必要がないため小ロットから素早く印刷できるという特徴がある。さらに近年、欧州を中心に需要が拡大しているのが建材用途だという。建築物外壁のタイルなどの模様を、凹凸を付けてプリント可能だ(図3)。
なおインクジェットヘッドの開発および製造、販売は、子会社のエスアイアイ・プリンテックが担っている。
SIIのインクジェットヘッドの吐出機構はピエゾ(圧電)方式である。ピエゾ方式は、ピエゾ素子の変形のさせ方によって、シアモード方式やたわみモード方式がある。SIIではシアモード方式を採用する。シアモード方式は比較的大きな吐出力が得られ、インク粘度や吐出量などに多様さが求められる産業向けに適している。なおセイコーエプソンがコンシューマ向け中心に展開するインクジェットプリンタはたわみ方式で、比較的製造が容易だという。
この産業用インクジェットヘッドをスーパーコンピュータ(スパコン)で解析した例や、導入の経緯などについて、SII 生産技術本部 生技企画部 課長の島田弘一氏および主任の渡辺聖士氏に話を聞いた(図4)。
両氏が在籍する生産技術本部は、全社を通じたモノづくりのための技術開発および、その普及・定着を担っている。個別の製品の設計開発については各事業部で行われている。生産技術本部の中にCAE部隊もあり、そこで島田氏は主に構造解析、渡辺氏は熱流体解析の分野を担当しているそうだ。
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