IoT(モノのインターネット)との関連もあって、昨今注目が集まってい無人飛行機(ドローン)。医療分野への適用も世界各地で始まっている。
米国調査会社のDeloitte(デロイト)の推計によると、2015年の非軍事分野におけるドローン(UAV:Unmanned Aerial Vehicles)の販売台数(インストールベース)は100万ユニットを上回り、業界全体の総売上高も8億米ドルから12億米ドル規模へ拡大する見通しだ(関連情報)。
ドローンの適用領域も、農業における「プレシジョン・アグリカルチャー」、電力における風力発電設備の保守・メンテナンス、自然災害発生時の捜索活動や緊急物資輸送、さらには医療分野へと広がりつつある。
米国では、2010年のハイチ地震発生後の緊急支援活動を契機に、公衆衛生/医療教育関連機関や産業界で、災害・救急医療におけるドローン利用に関する検討、実証研究が行われてきた。
例えば、2015年4月、米国赤十字社などが「災害対策・復旧活動のためのドローン」と題する報告書を公表している(関連情報)。
また2015年7月、ジョンホプキンス大学の研究チームが、ドローンを利用した血液検体の輸送に関する概念実証研究の成果を公表している(関連情報)。実証研究では、成人56人から収集した血液検体336サンプルの検査結果について、ドローン輸送のケースと通常輸送のケースで2群比較を行っている。図1は実証研究の流れ、図2は実際の実験の様子を示したものだ。

(左)図1 ジョンホプキンス大学研究チームによる実証実験の流れ。(右)図2 実証実験の様子(クリックで拡大) 出典:Amukele TK, Sokoll LJ, Pepper D, Howard DP, Street J (2015) Can Unmanned Aerial Systems (Drones) Be Used for the Routine Transport of Chemistry, Hematology, and Coagulation Laboratory Specimens?. PLoS ONE 10(7): e0134020. doi:10.1371/journal.pone.0134020当初、ドローン輸送時に、急なハードランディング(硬着陸)を行った場合、血液細胞が破壊される懸念があったが、そのような結果は認められなかった。ジョンホプキンス大学は、今回の概念実証を踏まえて、アフリカを始めとする新興国市場のグローバルヘルスへの適用を検討している。グローバルヘルスの領域は、ドローンだけでなく、ウェアラブル健康機器やセンサー/M2Mネットワークなど、さまざまなIoT(モノのインターネット)を利用した医薬品/医療機器/医療材料の物流管理でも注目されている。
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