今回、可視光半導体レーザーの光源モジュールの開発を担当したのは島津製作所である。同社は1995年から、レーザーモジュールやレーザーデバイスを手掛けており、写真印刷や試薬蛍光の用途を中心に顧客に納入してきた。現在は年間平均で1000台のレーザーモジュールを販売している。
今回開発した高輝度モデル、超小型モデルとも、汎用モジュールとして展開できるように光ファイバー結合型の光源モジュールになっている。島津製作所 デバイス部 センサ・デバイスビジネスユニット センサ・デバイス技術グループ グル―プ長の東條公資氏は「汎用化による開発効率化やコスト低減だけでなく、高集光性にいる光利用効率の向上、光源と発光部の分離による熱設計の容易化や部品最適配置といったメリットが得られる」と説明する。
そして両モデルを開発する基礎となった技術が「BLUE IMPACT」である。半導体レーザーデバイスの多重化技術と高精度の光ファイバー結合技術によって高出力化と高集光性を実現する技術であり、レーザー加工用の光源として既に製品展開もされている。今回の光源モジュールは、レーザー加工用で培った技術を、プロジェクタやディスプレイのバックライトといった映像関連、照明など向けに横展開した形になる。
高輝度モデルについては、赤色特性が10W、緑色特性が10W、青色特性が20Wを上回っている。直径200μmの光ファイバーによるマルチモード出力となっており、「従来比で1桁向上した世界最高クラス輝度を実現した」(東條氏)という。なお、映画館などで用いられているプロジェクタの光源には1万ルーメン以上の輝度が求められているが、現在用いられているのはキセノンランプや高圧水銀灯だ。今回の高輝度モデルは、1万ルーメン以上の輝度を可視光半導体レーザーで実現できることを示すものになる。
一方、超小型モデルは、モジュールの寸法が1×1×0.5cmで、体積は0.5cm3。シングルモードファイバー出力型では世界最小クラスになる。「当初は1cm3が目標だったところ、0.5cm3を実現できた。まだ小型化の余地はあると考えている」(同氏)としている。
これらの開発成果を広げるため、大阪大学や島津製作所、今回協力した9社の機器メーカーなどが参加する「可視光半導体レーザー応用コンソーシアム」の活動を拡大する。同コンソーシアムでは、可視光半導体レーザーに関するガイドラインの作成や、IECなどにおける国際標準化に関する活動を行ってきた。
代表を務める大阪大学の山本氏は「現在、材料、デバイス、システムメーカーを含めて50以上の企業・団体が参画している。2017年3月に参加数を150、2020年には500、2030年には1000まで増やしていき、グローバルな組織にしていきたい」と述べている。
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