引張強度が従来比1.2倍のハイエントロピー合金の積層造形技術を開発FAニュース

日立製作所と東北大学金属材料研究所は、金属用3Dプリンタを用いたハイエントロピー合金の積層造形技術を開発した。従来比1.2倍の引張強度と1.7倍の孔食電位を備えた、複雑な形状部品の試作に成功した。

» 2016年03月03日 07時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所は2016年2月15日、東北大学金属材料研究所と共同で、金属用3Dプリンタを用いた「ハイエントロピー合金(HiPEACE)の積層造形技術を開発したと発表した。

 化学プラントや油井・ガス井掘削設備などの部品は、強い腐食性ガスにさらされるため、高い強度と耐食性が求められてる。日立と東北大学では、引張強度や耐摩耗性、酸・アルカリ環境下での耐食性に優れたハイエントロピー合金に着目。2014年より高強度・高耐食な部品製造技術の開発を進めてきた。その結果、金属用3Dプリンタを用いる際、製造時に高硬度の金属間化合物を網目状に析出させることで、鋳造時に比べて引張強度を1.4倍高めることに成功している。

 今回、引張強度と耐食性のさらなる向上のため、金属用3Dプリンタを用いた製造工程のうち、局所溶融・急冷凝固プロセスを最適化したハイエントロピー合金の積層造形技術を開発。3Dプリンタによる部品の造形は、約70μmの厚さの金属粉末に設計図に基づいて電子ビームを照射するが、そのエネルギーと照射時の走査速度に加え、電子ビームを粉末全体に照射する予熱プロセスに着目した。

 同プロセスでは、粉末の予熱温度を最低限に制御し、予熱温度と溶融温度の差を大きくすることで、凝固速度が速くなる。その結果、高耐食性を備えたマトリクス(合金の大部分の体積を占める組織構成要素)相中に数10nm程度の高硬度な金属間化合物を均一に分散させることに成功した。これにより、ハイエントロピー合金を材料として、従来の1.2倍の引張強度と1.7倍の孔食電位の両立に成功。組成ムラがなく、均質で複雑な形状部品の製造が可能になったという。

 今後両者では、実使用環境での実証実験を進めるとしている。

photo 鋳造法と3Dプリンタを用いて製造した部品の組織と特性の比較
photo 試作造形に成功した複雑な形状を有する羽根車

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