岩手県は、「メイドイン岩手」のクルマづくりを目指している。東日本大震災の被災地域での利用を含め地元で必要なクルマを、県内の自動車関連企業で協力して作ることが目標だ。従来の下請け体質から脱却し、より積極的なモノづくりに取り組んでいく。
岩手県は、「メイドイン岩手」のクルマづくりを目指している。降雪や山道の多さといった岩手県特有の環境、高齢化、東日本大震災の被災地域での利用に向けた地元で必要なクルマを、県内の自動車関連企業で協力して作ることが目標だ。県内には自動車メーカーやサプライヤと取引する企業が約200社あり、「車両1台全ては難しいが、かなりの範囲を賄える技術がそろっている」(いわて産業振興センターものづくり振興グループ 研究開発チーム 副主幹の田澤潤氏)という。下請け体質から脱却し、積極的なモノづくりに取り組んでいく。
岩手県の自動車産業は、1993年に関東自動車工業(現トヨタ自動車東日本)が岩手工場を稼働させたのをきっかけに成長してきた。工場に近い立地の企業から部品を調達する自動車メーカーの方針を受けて、時計など精密機械の部品製造に従事する地元の企業が自動車に参入した。自動車向けではあるが、精密機械向けと同様にサイズが小さく精度が求められる部品の加工を得意としている。
自動車は岩手県にとって重要な産業で、2014年度の同県の製造品出荷額のうち、自動車を含む輸送用機械は約5700億円で全体の25.2%を占めている。大手サプライヤの生産子会社も複数立地している。しかし、地場の自動車関連企業の多くは「取引先から指示されたものを作って納める下請け体質が抜けきれない」(田澤氏)のが現状だ。この状況を打破するため、「各社の技術力は高いので、県内企業が協力し合うことで新しいものを生み出したり、下請けから提案型のビジネスに転換」(同氏)していこうとしている。
岩手県の自動車産業の転換に向けて、関東自動車工業出身の久郷和美氏や、日産自動車やボッシュに勤めた今関隆志氏が中心となり「いわて環境と人にやさしい次世代モビリティ開発拠点プロジェクト」がスタートした。
2015年度に初めて、実際の部品で岩手県内の技術の棚卸しを実施した。車両を模した枠組みに県内企業の量産中の製品だけでなく開発品を並べると、車両の大部分の部品がそろった。「実際に集めると、これほど多かったのか」という声が参加企業から聞かれたそうだ。
棚卸しで集まった37社と3つの大学の部品は「ショーケースカー」として2016年1月13〜15日に開催された「オートモーティブワールド2016」で展示した。
ショーケースカーは、県内企業のコミュニケーションを促進する効果が出ているという。「受注した部品を社内で黙々と作るのではなく、どこの会社が何を作っていてどんな技術を持っているか、関心を持つ人が増えてきた」(同氏)。
同プロジェクトには、ハードウェアだけでなく、生産技術や設計、運転支援システム向けの情報処理など幅広い分野で企業や大学が参加している。
同プロジェクトの最終目標は、岩手県内で100%の部品を調達して完成車を量産することではない。自立して技術力と競争力を高め、地域に根差しながら県内の自動車産業を発展させていくことを目指す。
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