試作はまず自分で作って動かす。外部に丸投げする時間はなく「内製できるものは内製、自作できるものは自作する」のが基本だ。
そのために同社が活用しているのはDMM.make AKIBA。同社と同じビル内にあり、スピード感を持って試行錯誤を繰り返すことができる。「開発をスピードアップするには、できることは自分たちでするというのが大きなポイント」と松本氏は言う。
アジアで行う量産においても、開発チームが最後までかかわる。「エンジニアが量産を知らないのはおかしい。量産に向けて設計するのだから、量産を知らずに設計できるわけがない」と松本氏。中国の部品を使う場合もあり「直接サプライヤーとやりとりするので、量産を知らなくては部品選定もできない」。実際製造する工場には10回以上出向き、場合によってはラインで直接指導することもあるという。松本氏は「ここまでしないとニッチなものは作れないし、工場と一緒に作ることがスピードの秘訣。こうしてできあがったものは自分の子どものようで、モチベーションや責任感にもつながる」と述べた。
販売は、先に紹介したように「100カ国で100個ずつ売れば1万台」というニッチ戦略。とはいえ、100カ国は無理だろうと思うかもしれないが、2014年当時で20人未満の社員数ながら、既に40カ国に出荷の実績がある。売り上げの約53%は海外で、海外の割合はますます高くなり、もうじき7割に到達するそうだ。「各国の物流や認証などもあり、出荷して本当に届くのか、回収できるのかという課題は常にあるが、そこもノウハウ」と松本氏は説明する。
同社の開発のスピード感は「少人数で作ること、合議制を取らないこと」から生まれている。松本氏の言葉を借りれば「Cerevoの強みはスピードしかないと思っている。良いものを大量に作れる大資本のメーカーに勝つには、スピード以外ない」という考えなのだ。
あまりにニッチで誰も作らないもの。しかし世界中の誰かは欲しいと思っているもの。「それを1秒でも早くユーザーに届けるのがわれわれのスタンス」と松本氏は締めくくった。
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