2016年のCESで自動車メーカーが示唆した「自動車産業の構造転換」2016 CES&デトロイトモーターショー2016レポート(前編)(3/4 ページ)

» 2016年01月20日 11時00分 公開
[桃田健史MONOist]

プレスデーやキーノートスピーチの主役もオートモーティブ

 翌日の1月5日は、マンダレイベイホテルでプレスデーが行われた。パナソニック、サムスン、LG Electronics、クアルコムなどのエレクトロニクス企業の発表では、メディアが一斉に飛びつくような、未来を予感させる次世代デバイスやビジネスモデルはなかった。また、ラスベガスコンベンションセンターで行われたソニーの発表では、メディアが最も注目したのは「VR関連ソフトウェアの充実」だった。

 その一方で、CESにおける存在感が年々増しているのがオートモーティブだ。プレスデーの他、6日以降に実施されたキーノートスピーチでも、自動車メーカーによる“新たなる事業計画”が次々と発表され、同じくキーノートスピーチに登場したIBMやNetflixに勝る強烈なインパクトをメディアと市場全体に与えた。

 例えばトヨタ自動車は、2015年11月に発表した、人工知能の開発などを行なう北米の研究開発拠点「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」の詳細を発表。General Motors(GM)とVolkswagen(フォルクスワーゲン)は、それぞれが次世代電気自動車の公開に加えて、イスラエルの画像認識の技術開発ベンチャーであるMobileye(モービルアイ)と車両走行のビッグデータ解析に関する総括的な契約を発表。

トヨタ自動車によるTRIの発表 トヨタ自動車によるTRIの発表(クリックで拡大)
GMが公開した次世代電気自動車「Bolt EV」 GMが公開した次世代電気自動車「Bolt EV」(クリックで拡大)

 Ford Motor(フォード)は、QNX Software Systemsの車載OSを採用した「SYNC3」にも適用している、車載機とスマートフォンの連携プラットフォーム「スマート・デバイス・リンク(SDL)」の開発でトヨタ自動車と連携すると発表。ただし、トヨタ自動車の場合、車載OSはLinuxを使う。さらにフォードは、Amazon(アマゾン)とのスマートホームに関する連携を初公開した。これは、SYNC3のAPIをアマゾンのハードウェア「echo」と共用し「ALEXA」と呼ぶサービスを提供するものだ。

フォードとアマゾンの提携も発表された フォードとアマゾンの提携も発表された(クリックで拡大)

 これらように、自動車メーカーの発表の多くが「自動車産業の構造転換」を示唆するような内容だった。日本では、「今回のCESは、自動車メーカーが自動運転の技術を披露した」という類の一般報道が目立った。しかしCESの現場にいた筆者には、“そうは思えなかった”。

 自動運転に関しては、NVIDIAが次世代型のGPU「Pascal」を2基持つ車載用コンピュータ「DRIVE PX2」を公開すると同時に、自動運転の開発におけるディープラーニングのプロセスを詳しく紹介した。

NVIDIAの自動運転関連の展示(左)と車載用コンピュータ「DRIVE PX2」のボード(右)(クリックで拡大)

 その他では、屋外の展示スペースや会場周辺の公道を使ったADAS(先進運転支援システム)や歩行者保護のデモンストレーションを、Valeo(ヴァレオ)、Delphi Automotive(デルファイ)、日立オートモーティブシステムズ、さらにドイツのサプライヤであるIAVがMicrosoft(マイクロソフト)と連携して行っていた。

IAVとマイクロソフトによるADASのデモンストレーション IAVとマイクロソフトによるADASのデモンストレーション(クリックで拡大)

 こうしたデモは、CESの参加者である一般バイヤー向けではなく、自動車メーカー関係者向けに行われている。このように、オートモーティブの領域については、元来のCESが対象としていたコンシューマー(消費者)向けの電化製品の展示会ではなく、自動車産業界のB2B見本市としての位置付けが強くなっている。

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