組み込み機器において存在感を増す「組み込みOS」組み込み機器開発入門(6)(4/4 ページ)

» 2015年12月21日 07時00分 公開
[EIPC事務局MONOist]
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近年の組み込みOSの傾向

 このように組み込みOSと汎用OSは、目的の違いから明確に位置付けが異なっていました。しかし近年では、技術が高まり汎用OSを利用できるだけのパワーを持ったハードウェアを安価な値段で利用できるようになり、位置付けも変化しています。

 Windows 98などでPCが急激に普及し始めたころには、PCに搭載されるHDDの容量は600MB程度が主流で、CD1枚(640MB)にも満たない容量でした。現在では、2TBの容量を持つHDDが1万円程度で購入できる世の中になっています。

 CPUも「200MHz!速い!」と騒がれた頃の面影はどこへ行ったのか、最近では「2GHz(2000MHz)のクアッドコア」などというCPUが手ごろともいえる価格で入手できます。この低価格化の波により、組み込み機器でも性能の高いハードウェアを搭載できるようになっており、汎用OSを搭載することが可能となっています。

 組み込み機器に汎用OSが搭載される要因としては、組み込み機器に求められる機能が多様化、高度化したことも挙げられます。ネットワーク接続やサーバ接続、他の機器との連携、さらにグラフィカルな画面が要望されることは珍しくありません。こうした機能を実現するためには、組み込みOSに比べて高機能な汎用OSを利用する方が容易です。

 もちろん、温度計などの単純な機能の組み込み機器も世の中に多く存在しますが、一方で、汎用OSを組み込み機器に搭載する流れというのも確実に進んでいるのです。

 近年の組み込み機器開発においてOSの選定をミスしてしまうと、ソフトウェアの開発規模、開発環境、開発難易度が膨大に膨れ上がるといった問題が発生します。利用するハードウェア性能、必要とする機能を見極めながら最適なOSを選択することが、今日の組み込み機器開発では重要な要素の1つであると言えます。

 IoT、M2Mの時代が到来し、温度計などの単純な機器までもがインターネットに接続しデータの送受信を行い、スマートフォンやモバイル機器と連携する未来が近づいています。このような世の中では、これまでOSがなくても十分に機能を果たしていた機器までもが、機能の多様化、高度化によってOSを搭載する必要が出てくることが予想されます。

 OSは、ますます組み込みソフトウェアの中で中心的な位置付けとなるでしょう。

最後に

 全6回にわたり組み込み機器開発に関する記事を記載いただきました。書ききれなかった部分も多々ありますが、『ものづくり』に興味をお持ちの方に、少しでも組み込み機器や組み込みシステムを理解して頂けたならば幸いです。

 私は、現在の日本の『ものづくり』は、海外メーカー、海外製品の台頭によって押され気味だと感じています。日本の『ものづくり』業界が活性化し、よりよい『ものづくり』が実現できることを切に願っております。

 第6回までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。(連載完)

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