全高の高いハイトワゴン系の軽自動車に目立つふらつきを抑えて乗り心地を向上するため、タイヤのパターンだけでなく形状も左右非対称にした。振動を抑える役割も担う踏面のパターンや、側面の剛性を最適化している。これにより、車線変更時に横方向に掛かる加速度の変動を抑え、ドライバーのハンドリングをしやすくした。
軽自動車は普通乗用車と比べてタイヤの径が小さく、同じ距離を走っても回転数が1.2倍になる。そのため早く摩耗しやすい。また、街中での小回りやハンドルの据え切りで摩耗が偏りやすい傾向もあるという。耐摩耗性を向上しながら、濡れた路面でのブレーキ性能や転がり抵抗を維持しなければならない。
タイヤの長寿命化に向けた耐摩耗性向上を目指し、「3D M字サイプ」や「チャンファリング」といった技術により均一に地面に接するようにした。この結果、長寿命が特徴のECOPIA EX20Cと比べて摩耗寿命を10%延ばした。長寿命化に加えて「制動力向上にも効果があり、軽自動車でも搭載が増えている自動ブレーキにも適しているのではないか」(山口氏)としている。
また、ウエット性能と低燃費性能を両立するため、シリカや「サステナブル分散性向上剤」「シリカ増量ウエット向上ポリマー」といった材料の配合比率を見直した。これらの技術により、濡れた路面での停止距離はECOPIA EX20Cと比較して4%短縮しながら、転がり抵抗はECOPIA EX20Cと同等を維持した。
軽専用のプレミアムタイヤの企画は2010年頃からスタートしていた。同社のマーケティング部門が軽自動車でもプレミアムタイヤの需要が増えると見込み製品化を要望していたのだ。しかし、実際に設計してみると「軽自動車のサイズでREGNOブランドにふさわしいものを作るのは難しかった」(長島氏)という。
「ブリヂストンの総力を結集して最高峰、最高級の性能で軽自動車専用タイヤを作り込む」(同氏)ため、営業から開発、生産まで部門を横断した組織「チームREGNO」で商品開発した。中堅の年代が中心メンバーとなって打ち合わせを繰り返した。
設計担当として参加した同チームの櫻井太郎氏は「軽自動車のためだけに性能を追求するのは、セダン/クーペ兼用のような従来製品の開発とは違う大変さがあった。軽自動車の使われ方やニーズ、車両の特性、軽自動車特有の技術課題を全て設計に反映するため、何度も各部署に通って話を聞いた」という。
量産設計を担当した岡崎卓也氏は、プレミアムタイヤとして技術を盛り込んだ同製品を生産する難しさについて「細かなサイプが施されているとタイヤを金型から外しにくくなる。コンピュータ上でのシミュレーションや、タイヤの小さいピースを試作する実験が重要になった」と述べている。
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