ロームは、多機能化により電気系統が増えるカーオーディオなどの車載情報機器向けに、動作電力を「業界最小」(同社)に抑えたシステム電源ICを開発した。高効率のDC-DCコンバータを採用することで、動作電力を従来比で約3分の1に抑えた。
ロームは2015年11月25日、電源系統が増加するカーオーディオなどの車載情報機器向けに動作時の消費電力(動作電力)を従来比で65%低減したシステム電源IC「BD49101AEFS-M」を開発したと発表した。「カーオーディオ用システム電源ICとしては業界最小の動作電力」(ローム)だという。サンプル価格は税別で1個700円。2015年8月から月産50万個で生産を始めている。生産拠点は前工程がローム浜松(静岡県浜松市)、後工程はタイのROHM Integrated Systems(Thailand)となる。
これまで車載情報機器向けの電源ICは、設計が容易な一方で電力変換効率が高いとは言えないリニアレギュレータを中心に構成されることが多かった。これに対してBD49101AEFS-Mは、電力変換効率が比較的高いDC-DCコンバータを中心とした電源ICとなっている。これにより、大きくなりがちなCDメカ(光ディスクの動作機構)やマイコンの消費電力を大幅に削減することに成功した。
従来のカーオーディオ用システム電源IC+USB用DC-DCコンバータICとBD49101AEFS-Mの動作電力を比較した事例では、1.2V電圧のマイコンの消費電力が従来比で約6分の1の0.32W、3.3V電圧のマイコンが同約9分の1の0.18W、CDメカが同約3分の1の1.89Wになった。合計の動作電力は、従来の13.3Wに対して、BD49101AEFS-Mは65%減の4.66Wまで削減できたという。
ただしDC-DCコンバータを電源ICに用いると、外付け部品が多くなり、コストや実装面積が増大するという課題があった。同製品ではシステム全体の構成を見直し、DC-DCコンバータとリニアレギュレータの最適な組み合わせを検討し、DC-DCコンバータを2系統に抑えた。
またDC-DCコンバータはスタンバイ時など負荷電流が小さい時は効率が大幅に低下してしまうため、常時通電が必要になるマイコン向けの電源ICには適していないとされている。そこで、スタンバイ時のマイコンの動作に用いる専用のリニアレギュレータも搭載した。これにより、自動車のエンジン停止時に流れる暗電流は100μAに抑えられている。
DC-DCコンバータの採用と電源構成の改良により発熱を抑えた。これにより、基板だけで放熱が可能な面実装パッケージでの実装ができるようになり、熱設計の大幅な簡略化や、パッケージ体積で従来比14分の1という小型化も実現した。
この他、USB機器に充電する際に接続ケーブルによって異なる配線抵抗に起因するケーブルインビーダンスを補正する機能も内蔵した。ケーブル端の電圧を一定に保てるので、充電時間の増加を防ぎ、USB規格の要求も満たせる。
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