原子炉施設の3次元FEM耐震解析のモデル化法を検討CAE事例(3/3 ページ)

» 2015年11月09日 10時00分 公開
[加藤まどみMONOist]
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レイリー減衰の係数を新しく検討

 要素別レイリー減衰は、要素質量マトリックスに係数αe、要素剛性マトリックスに係数βeが掛かった和となっている(図5)。

図5:施設全体の減衰モデル化方法の検討

 このαeとβeの値によって減衰の特性が変わる。そのため非常に重要だが、その決定方法についてはあまり研究が進んでいなかったという。

 発表では、重み付き最小二乗法における値Jeが最小になるような、αe、βeを設定する方法を検討した(図6)。

図6:減衰モデル化における計算式

 使用したFEMモデルでは固有モードごとに減衰が違うため、これらは固有モードごとの設定となる。なお各固有モードにおける重み係数の付加を検討した。解析結果は入力の地震動のスペクトル特性と、対象モデルの応答特性の2つが大きく効いてくる。そのためこれらを考慮し、重み係数は応答スペクトルと刺激関数の積として設定した。

 なお減衰比はそれぞれ、原子炉建屋、格納容器、遮蔽壁とペデスタルが5%、圧力容器と内部構造物が1〜7%である。

誤差範囲が従来法より小さいことを確認

 この要素別レイリー減衰を用いた場合の解析結果と、比較のためにレイリー減衰を使用した従来研究(※1)における解析結果の最大絶対加速度を比較した(図7)。

(※1):宇野ら、ゴム支承を用いた反力分散構造の減衰性評価に関する一考察、第8回地震時保有耐力法に基づく橋梁の耐震設計シンポジウム講演論文集(2005)、P.61-88

図7:減衰モデル化方法の検討結果

 入力波には地震を模擬した広帯域のランダム波を用いた。線形の時刻歴解析を実施した。解析モデルの全節点における最大加速度を計算して、その誤差を、ひずみエネルギー比例型減衰を用いた場合の解析結果を基準とした誤差を求めて評価した。ひずみエネルギー比例型減衰の場合は直接法では時間がかかるため、モーダル法を用いた。

 その結果、従来研究の場合は最大50%程度の誤差率の広がりが出た。それに対して新しく開発した方法では、±20%の範囲に収まっていた。これより従来の方法よりも要素別レイリー減衰の方が有効だと分かった。場所により減衰は大きく変わるが、どの場所で見ても、各誤差率の分布は小さくなっていた。従って、新しく開発した方法で、減衰はある程度、正確に得られる見込みが得られた。今後はまだ残っている誤差をどう取り除いていくか検討を進めていくということだ。

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