原子炉施設の3次元FEM耐震解析のモデル化法を検討CAE事例(2/3 ページ)

» 2015年11月09日 10時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

入力波によらず解析結果は一致

 シミュレーションモデルは、シェル要素でモデル化した(図3)。

図3:サプレッションプールの解析モデル

 要素数は8000程度と小規模になる。水と設置する構造体の部分にMFLUIDを設定し、自由水面はダミーのシェルでモデル化した。ダミーのシェルは、重力を模擬したばね要素により、鉛直方向に支持している。入力波は試験において振動台上で取得した加速度時刻歴記録を用いた。解法はモーダル過渡応答解析のSOL112を使い、時間刻みは0.001秒として解析した。

 これらの試験結果と解析結果を比較した結果は図4のようになった。

図4:試験結果と解析結果の比較

 構造側へ与えるパラメータは流体の圧力となるため、その圧力を比較した。容器壁面の各点における試験結果と実験結果を比較したところ、正弦波、地震波ともに、おおよそ圧力の変動は一致した。

 以上により、試験結果と解析結果は入力波によらず一致すると考えられることが分かった。そのため今後はMFLUIDによる流体モデルを用い、連成解析での比較などを進めていくという。

建屋全体の減衰モデルを検討

 また鬼塚氏は、原子炉等を含めた原子炉建屋全体の減衰モデル化法について検討した結果も紹介した。今回は、MSC Nastranの減衰ツールキットにある減衰モデルの1つである、要素別レイリー減衰を用いた減衰モデル化方法を開発し、有効性を確認した。

 なお従来は、ツールキット中のひずみエネルギー比例型減衰が、原子炉施設や鉄道構造物、橋梁などに使われてきたという。この減衰モデルを用いて、3次元で建屋全体のFEMモデルにSOL109直接過渡応答解析を実施すると、紹介した例ではレイリー減衰と比べて、減衰マトリックスのデータ容量だけで300Gバイト、レイリー減衰の370倍ほどになった。また時間もレイリー減衰だと1日で終わるが、従来の方法はその85倍以上かかった。

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