また、IPSOに並んでOMA(Open Mobile Alliance)の名前が出ているのも面白い。OMAがなんぞや、という話はまた回を改めてご紹介するが、モバイルサービスの事業者(単にスマートフォンのメーカーだけでなく、キャリアやアプリケーションベンダーなど、少しでもモバイルに関係するメーカー全て)に門戸を開いている団体であり、ここもまたさまざまな標準化作業を行い、これを公開している。
これらの中にはIPSOと互換性の無いものも含まれる(例えば「OMA Mobile Spam Reporting」なんて仕様はIPSOにはまず見当たらない)訳で、この仕様の全部が全部mbed OSに載る訳ではないが、そうした外部のメッセージプロトコルを利用すれば良し、と割り切っているようだ。もっと言えば、アプリケーション事業者が独自にメッセージプロトコルを開発・実装することも可能で、その意味では「今のところは」特に何も定めが無いとして良いだろう。
「今のところは」というただし書きが付くのは、この方針に関する今後の展開などが一切公開されていないためだ。現状、mbed OSはまだ具体的なマーケットを絞り込むところまで行っていない。
以前紹介したmbed内蔵コーヒーサーバーにしても、別にこうしたスマートコーヒーメーカー(?)向けのプロトコルを実装したというワケではなく、「コーヒーメーカーですらコネクティッドデバイスにできますよ」という技術的可能性を見せただけの話で、これにあわせてコーヒーメーカーメーカー(???)が集まって搭載されるべきプロトコルの検討を始めた……なんて事は筆者が知る限り皆無である。
これは、AllSeenやBrillo/HomeKit、あるいはOIC/IoTivityといった規格が、いずれもスマートフォンやタブレット、一部のPCといった既存のプラットフォームをベースに、なるべく早くマーケットを構築しようという姿勢であるのに対して、mbed OSは極端に言えば「これからマーケットを作る」という姿勢であり、そもそも存在しないマーケット向けの上位プロトコルを定義しても無駄というか、不毛な作業であると割り切っているからだ。
なのでこのあたりは今のところ、mbed OSを使ってアプリケーションを構築したいという開発者に任せられている模様だ。ただ、mbed OSが順調に広がり、複数のアプリケーションが同一マーケットで互換性を持たないまま投入されそうな気配が出てきたら、あるいはその時にARMが何らかの介入をする可能性もある。
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