電気自動車の走行距離を3倍に、ナノ多孔質グラフェン採用のリチウム空気電池:電気自動車(2/2 ページ)
次に、このナノ多孔質グラフェン電極を用いたリチウム空気電池の充放電繰り返し試験を行った。酸化ルテニウムナノ粒子をグラフェンで挟んだ窒素ドープナノ多孔質グラフェンは、放電し切った場合で電極単位重量当たり最大8300mAhの電気容量を持つ。これを、電極単位重量当たり2000mAhの電気容量に固定した場合、100サイクル以上の充放電ができることが分かった。このときのエネルギー利用効率は72%を超えたという。充放電時の電流密度を変化させる実験を行ったところ、従来のリチウム空気電池よりも充電スピードが速いことも判明した。
開発したリチウム空気電池の充放電特性の試験結果。充放電の1サイクル目から100サイクル目まで大きな変化は起きていない(クリックで拡大) 出典:JST、AIMR
これまでのリチウム空気電池の研究成果では、電気容量とエネルギー利用効率、充放電繰り返し性能という3つの特性を全て満たすものはなかった。今回開発したリチウム空気電池は、電極単位重量当たりの電気容量が2000mAh、充放電繰り返し性能が100サイクル以上とこれまでの研究成果と同等であり、その上でエネルギー利用効率も72%以上と比肩し得る性能になっている。
AIMRの研究結果と他の研究成果の比較(クリックで拡大) 出典:JST、AIMR
ただし、高価なルテニウムを用いることによるコストの増大は課題の1つとなる。また、正極での反応時に測定される電圧が理論値よりも高くなり、正極のグラフェンや酸化ルテニウム触媒を腐食する原因になる「過電圧」を小さくするため、電極単位重量当たりの電気容量を2000mAhに抑えているが、電気容量をさらに高めるには過電圧そのものの低減も必要になる。
「今回の結果は、高容量、高効率なリチウム空気電池の正極材料に関し、実用に向けての設計指針を示した重要な成果だ。今後は実用化を目指して企業と模索していく」(研究グループ)としている。
- 鉛バッテリーはリチウムイオン電池より電動車両に向く?
自動車の電源として単電池で使われている鉛バッテリー。しかしバッテリーフォークリフトのような電動車両では、複数の鉛バッテリーを用いた組電池システムとして利用されている。パナソニックが、コマツのバッテリーフォークリフト用に新開発した「EV鉛蓄電池 組電池システム」は、電動車両への適用をさらに拡大し得る製品だ。
- 車載リチウムイオン電池のコスト半減と容量倍増を2020年に実現――ボッシュ
Robert Boschの日本法人・ボッシュ社長のウド・ヴォルツ氏は、年次記者会見で、GSユアサ、三菱商事と共同開発中の車載リチウムイオン電池の開発時期と性能目標についてコメントした。
- 容量がリチウムイオン電池の7倍!? 酸化物イオンを使う新原理の二次電池
東京大学大学院工学研究科教授の水野哲孝氏のグループと日本触媒は、現行のリチウムイオン電池の7倍に達するエネルギー密度を可能とする、新原理の二次電池の動作を実証したと発表した。この新原理の二次電池は、正極中における酸化物イオンと過酸化物イオンの酸化還元反応を利用する。
- リチウムイオン電池の容量が従来比3倍に、積水化学がゲルタイプ電解質を新開発
積水化学工業は、一般的なリチウムイオン電池に用いられている電解液と同等クラスのリチウムイオン電導性を持つゲルタイプ電解質などを用いて、リチウムイオン電池の容量を従来比で3倍まで高めると同時に、生産速度も同10倍に向上できる技術を開発した。2014年夏をめどにサンプル提供を始め、2015年度には量産販売したい考え。
- 化学電池と物理電池を超える“量子電池”、「バテナイス」とは
半導体テスター用プローブカードの大手企業として知られる日本マイクロニクスが、新構造の二次電池「バテナイス」の実用化に向けて開発を加速している。バテナイスは、リチウムイオン電池などの化学電池や、電気二重層キャパシタなどの物理電池を上回る特性を持つ“量子電池”だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.