長丁場の授業に疲れが見え始めた生徒たち。「本当にあのデザインでできるのかなあ」と半信半疑で待つこと1時間半……。
ようやくクルマが3Dプリンタで出力されました! ノック式ボールペンで飛ばして遊ぶので、もちろん手のひらサイズです。生徒たちも実物に触れて一気にテンションが上がります。
上位入賞を目指し、生徒たちの目は真剣です。
無事成功に終わった犢橋高校の3DCAD講習会。企画者である有村先生に、学校教育での3Dプリンタ利用について質問しました(聞き手:MONOist編集部)。
――3Dプリンタを使った特別授業、学校での許可はすぐに下りましたか?
有村先生 こういった授業をする際は、事前に職員会議で承認を得なければならないのですが、どの先生も好意的ですぐに承認をもらうことができました。同僚の先生方もすごく興味を持っていました。強いて問題視された点を挙げると、運用コスト(電気代や材料費)についてです。
――実際に3次元CADの講習から3Dプリント出力までを半日の授業で行ってみてどうでしたか?
有村先生 生徒たちが斬新なデザインをどんどん作り上げていくので本当に驚きました。自分が考えたクルマが実物となって3Dプリンタから出てくる瞬間、皆とても喜んでいたのでやって良かったなと思います。また、時間は丸々半日かかってしまいましたが、1日で3次元CAD講習/3Dプリント出力/それを使った競技会までできたのは、モノづくりの流れが良く伝わるやり方だとあらためて思いました。
――逆に今後の授業化に向けて、課題はありましたか?
有村先生 今回は「半日で終わらせる」という時間の制約があったので、20人という人数制限を設けましたが本当は通常の1クラスの人数、約40人で実践したいところです。しかし、やってみて分かったのは、教師1人で教えきるのは工夫しないとかなり難しいかもしれません。今回は、新井原さんたちのサポートもあり成功することができたと思います。また、3次元CAD講習自体も1コマでやり切るには、もう少し作成物の自由度を狭めないと間に合わないと感じました。通常の授業に組み込むには、もう少し検討が必要だと思います。
今回の3DCAD講習会を振り返り、有村先生は「モノづくりの課題というのは正解がなく、個人の考えが出せるものなので、教育者としてどんどん取り入れて行きたいです。3Dプリンタを活用したモノづくりは老若男女楽しめるので、授業の中だけでなく、地域交流にも役に立ちそうだと考えています」と話してくれました。
まさか3カ月前に初めて3次元CADを学んだ先生とは思えないほど、先生自身の技術も向上していたことに驚きました。最新の機器と接するという学びだけでなく、”何かを作る楽しさ”を手軽に味わえることが、3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーションのいいところだとあらためて感じた1日でした。
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