国内市場だけを見ていると、トヨタ自動車のディーゼルエンジン開発における存在感はあまり大きいとは言えない。近年積極的にクリーンディーゼルを展開してきたマツダとは比べるべくもない。2015年5月末に発表した両社の提携に向けた会見でも、報道陣から「トヨタがマツダのクリーンディーゼルを求めているもでは」という意見が多く聞かれたほどだ。
しかし、トヨタ自動車は2001年以降、クリーンディーゼルの基本技術となっているコモンレールを採用したディーゼルエンジンの生産を開始し、欧州や新興国を中心に展開を拡大。2007年には年間100万台の生産を突破し、その後も年間80万〜100万台超の生産規模を維持しており、導入国数は156カ国となった。
ディーゼルエンジンのこれまでのラインアップは、排気量1.4lの「ND」、排気量2.0/2.2lの「AD」、排気量2.5/3.0lの「KD」、排気量4.5lの「VD」の4機種。これらのうち生産量の80%を占める中核機種がKDエンジンだ。
今回発表した1GD-FTVは、このKDエンジンに替わるべく、基本骨格から見直した次世代のグローバルディーゼルエンジン「GD」の1つとして開発されたのだ。
GDエンジンには4つの開発コンセプトがある。1つ目は「もっと走りやすいクルマ」だ。道路整備が行き届いていない新興国をはじめ、過酷な環境で使われることも多いディーゼルエンジン車に安心して走れる動力性能を持たせるために、発進トルクと低速トルクの向上を目指すというものだ。2つ目の「もっと燃費のいいクルマ」では、どんな車格の車両に搭載しても実用燃費の向上が実感できるように世界トップの熱効率が目標となった。
3つ目は「もっと静かなクルマ」。ディーゼルエンジンは、エンジン始動時をはじめ、ガソリンエンジンよりも騒音と振動が大きいことが課題とされてきた。これを、全ての運転条件で静かな燃焼を追求し、エンジン始動時から分かる静粛性を目指そうというわけだ。4つ目になるのが「もっとクリーンなクルマ」である。ディーゼルエンジンにはさまざまな課題があるが、ガソリンエンジンとの大きな違いは、排出ガスに占める窒素酸化物(NOx)と微粒子(PM)の多さだ。世界の排気ガス規制に対応できるようなクリーンさの実現が目標となる。
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